キング・オブ・シーヴズ

　これは、英国史上、最高額で最高齢の金庫破りと呼ばれた窃盗団の実話を基に「博士と彼女のセオリー」のジェームズ・マーシュ監督が映画化したもの。
　主演は、名優、マイケル・ケイン。共演もジム・ブロードベント、トム・コートネイ、レイ・ウィンストンと、ベテラン名優勢揃いと言った趣です。

　愛する妻と平穏な日々を過ごすブライアン――かつて彼は“泥棒の王（キング・オブ・シーヴズ）”と呼ばれた、金庫破りのプロだった。
　妻との平穏な暮らしの為に泥棒稼業から足を洗っていたブライアンだが、妻の急死後、葬儀に訪れたかつての仲間と会った事もあり、泥棒稼業復帰に気持ちが傾いていく。
　そんなある日、自宅に出入りする顔なじみの配線工のバジルから、ロンドン随一の宝飾店街“ハットンガーデン”での大掛かりな窃盗計画を持ちかけられたブライアンは、かつての仲間に声をかけ、金庫破りの計画を練るのだが……

　この映画、予告編だけ見ると、老人版の「オーシャンズ１１」のような、軽妙で痛快な犯罪劇、と思わせますが、その実は大分違います。
　犯行の手口を詳細に示す内容は、模倣犯が出るのでは？と危惧するようなもので、その一方で、監視カメラとビッグデータから容疑者を絞り込む、現代の警察の捜査方もしっかり見せて行きます……まぁ、これは実話を元にしているだけに、その気になれば、何があったのかを知る事が出来る、と言う事でもあるのでしょう。
　また、ブライアンとその仲間たちの回想シーンとして、マイケル・ケインを始めとするそれぞれの過去のクライム・サスペンス出演シーンを流用しているののは面白い所だと思いました。
　
　映画の中心となるのは、仲間たちの内輪揉めと仲間割れ。
　計画に支障を来した時点で、抜ける者のもいれば、ブライアン自身も、若い頃の瞬発力が失われたのを思い知って途中で降りてしまい、後は、お約束の獲物の分配で揉めているうちに一網打尽、と……確かに、実話ベースでもあるし、犯罪が割に合う、と言うドラマも作れないのは判るものの、痛快さに欠ける内容には肩透かしを食ったような感じですし、如何に大金とは言え、獲物の分配で仲間割れし、相互不信に……と言う描写は、人間が小さく見えると共に、ドラマとしてもいささか醜悪……マイケル・ケインらベテラン名優の無駄遣いとまでは言いませんが、ちょっと勿体なく感じました。
　

　（２０２１年　１月１７日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ジェームズ・マーシュ

　■出演

ブライアン・リーダー　・・・　マイケル・ケイン

（その他のキャスト）
　ジム・ブロードベント　　トム・コートネイ　　チャーリー・コックス　　ポール・ホワイトハウス　　レイ・ウィンストン　　マイケル・ガンボン

　■コピー

英国史上、［最高額］　［最高齢］の金庫破り

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