ホテルニュームーン

　これは、「孤独な惑星」の筒井武文が現代のテヘランを舞台に作り上げた日本・イラン合作映画。
　出演は、主演のモナ役に新人のラレ・マルズバン、その脇をイランの名女優マーナズ・アフシャルと、永瀬正敏が固めると言うなかなかの豪華キャスト。

　テヘランで大学に通うモナは、生まれる前に父を亡くし、教師をしている母ヌシンとふたりで暮らしをしている。
　ヌシンは一人娘であるモナに厳しい門限を課し、モナはそんな過保護な母親に辟易していた。
　ある日、モナは、ヌシンがホテルで見知らぬ日本人男性と会うのを目撃する。それをきっかけに、モナは自身の出生をめぐる母の話に疑念を抱いて……

　この映画、サスペンスを思わせる導入部から、主人公・モナの出生の謎に迫る、と見せて、実は、些細な事で行き違った母娘関係の修復と言う結末に至る竜頭蛇尾な物語はいささか薄味だし、そんな物語の原動力となる、ヌシンが日本での過去を語らない、と言う理由、その隠された“真相”を、そこまで頑なに隠そうとするのかがどうにも判らないのです。
　判らないと言えば、モナが周囲に、何をやっているのか、何を考えているのかを頑なに説明しないのも理解に苦しむ所。モナの彼氏も、当初は異常に嫉妬深いのか、と思いましたが、モナが何も言わないのだから、そりゃ怒りたくもなるわなぁ、と同情さえしてしまいました。

　映画としては、イラン人のスタッフにより撮影された、テヘランの市井の暮らしを活写した様子により、現代のイランの暮らしが垣間見えるのは興味深くはあります。反面、日本側の描写はいささかステレオタイプで野暮ったく、日本とイランの間にある様々な問題を語ろうとしないのも物足りません。
　そして、日本とイラン合作映画として、両国に跨がり、手間暇かけて、映画を製作するのならば、もっと描く物語、語るべき内容があるのではないのでしょうか。
　映画としては丁寧に作られており、キャストのも豪華。それだけに、ドラマの薄さが残念に思えました。
　

　（２０２０年　１２月２８日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

筒井武文

　■出演

モナ　　・・・　ラレ・マルズバン

ヌシン　・・・　マーナズ・アフシャル

田中タケシ　・・・　永瀬正敏

（その他のキャスト）
　アリ・シャドマン　　小林綾子　　ナシム・アダビ　　マルヤム・ブーバニ
　

　■コピー

愛と秘密が、重なるとき。

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