天外者
（てんがらもん）

　これは、薩摩藩士として生まれ、明治維新の後、政府役人を経て商都・大阪の基礎を作った実業家・五代友厚を描く歴史ドラマ。
　天外者（てんがらもん）とは、鹿児島の方言で、並外れた人物と言う意。
　主演は、今年急逝した三浦春馬。「利久にたずねよ」、監督は、「海難１８９０」と言う歴史ものを手掛けて来た田中光敏。

　江戸時代末期.。ペリーが来航し日本に激震が走る中、攘夷か、開国か、国が大きく揺れていた。そんな中、開国派として大勢の志士に命を狙われる五代才助（後の友厚）は、遊女のはると出会い、自由な夢を見たいと言うはるの思いに突き動かされる。
　やがて、誰もが夢見ることの出来る国を造るため、坂本龍馬、岩崎弥太郎、伊藤博文らと志を共にするが……

　映画は五代才助が坂本龍馬に出会う所から始まり、その死までを描きます。物語的には、それこそ大河ドラマとして１年がかりでやるような内容で、新しい日本を作るという志を持ち、そして近代日本の経済の礎を築いた、その生涯を余さず描こうとしています。そんな五代友厚の人生は確かにドラマティックではあるものの、これを２時間にまとめたせいで、物語はダイジェスト感が強くなり、メリハリに欠けるものとなっているように思います。
　例えば、豊子が妻となるくだりも、豊子との出会いのシ−ンを描いたら、次のシーンでは子供が２人いる、と言う所まで飛んでしまい、これでは感情移入のしようもありません。

　明治維新についても、これを日本にとっての幸福な成功体験と描き、その暗部を描かないなど視点も一方的に思えます。
　連続ドラマなどで、たっぷり尺を取って描くならともかく、これを２時間の映画とするならば、もっと取捨選択が必要だったように思います――それこそ、魅力的な人物ではあるものの、それこそ、主役を食ってしまいそうな坂本龍馬とのエピソードを省く、とか……
　そして、才覚に溢れる自信家だった五代才助が、愛した女を失い、友を殺され、維新の先で辿り着いた境地――「死後、財産はなく、借金だけが残されていた」と言う、彼の心打つ生き様を生み出したその局面を描くべきではなかったのではないでしょうか？　
　

　（２０２０年　１２月　１５日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

田中光敏

　■出演

五代友厚　・・・　三浦春馬

坂本龍馬　・・・　三浦翔平

岩崎弥太郎　・・・　西川貴教

伊藤博文　・・・　森永悠希

はる　・・・　森川葵

（その他のキャスト）
　迫田孝也　　宅間孝行　　丸山智己　　徳重聡　　榎本孝明　　筒井真理子　　内田朝陽　　八木優希
　ロバート・アンダーソン　　かたせ梨乃　　蓮佛美沙子　　生瀬勝久

　■コピー

時代を超え、志は未来に生き続ける――

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