パリのどこかで、　　
　　　　あなたと

　これは、「おかえり、ブルゴーニュへ」のセドリック・クラピッシュ監督が過去を受け入れ前に進む男女を撮ったラブストーリー。
　「おかえり、ブルゴーニュへ」でも共演したアナ・ジラルドとフランソワ・シヴィルが、パリを舞台に再びクラピッシュ監督作品で共演しています。

　パリのアパートメントでひとり暮らしをするメラニーは、免疫治療の研究者で、何時までも元恋人との恋愛を引きずっている。一方、メラニーの隣りのアパートメントに住むレミーはｅコマース企業で働いており、同僚が解雇されたのに自分だけが昇進して社に残った事に罪悪感とストレスを抱えていた。
　メラニーはいくら寝ても寝足りない過眠症に、レミーは眠れない不眠症にそれぞれ苦しみ、セラピーに通うようになる。隣り合ったアパートメントに暮らし、同じように孤独を埋められない二人は、すぐそばにいながら知り合うことはなかったが……

　この映画、序盤はメンタルヘルスや新自由主義社会における労働の問題に切り込み、社会派のようにも思わせるものの、この映画にとって、それは都会の孤独を描く為の背景でしかなく、物語は、孤独な男女のすれ違いを描いて行きます。
　都市で暮らす独り者の内面を繊細に描いて、孤独と共に生きることのリアルを映し出しているのは美点だと思いますし、３０歳の大人故に、単純なボーイ・ミーツ・ガールの物語にはしない、と言うのも理解は出来ますし、多くのラブストーリーが安易に描いてしまう“出会い”が、現実にはなかなか難しい、と言うのを示すのには、意義ある事とは思います――しかし、やはりこれはラブロマンス。何時かは出会う展開となるのは予想出来てしまうだけに、主人公ふたりが、あそこまで交差しながらもすれ違い続ける展開には、中盤以降苛々してしまいました。

　映画はふたりがお互いに向き合った所で終わりますが、むしろ、その先を見せて欲しい、と思ってしまったのが正直な所です。　
　

　（２０２０年　１２月１３日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

セドリック・クラピッシュ

　■出演

メラニー　・・・　アナ・ジラルド

レニー　　・・・　フランソワ・シヴィル

（その他のキャスト）
　シモン・アブカリアン　　アイ・アイダラ　　レベッカ・マルデール

　■コピー

誰かと繋がっていたい。でも、どうしたらいいのかわからない。

　運命の出会いは　きっとあなたのそばにある。

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