これは、ラトビアの映像クリエイター、ギンツ・ジルバロディスが監督・製作・編集・音楽をひとりで手がけ、３年半をかけて作り上げた長編アニメーション映画。
　２０１９年のアヌシー国際映画祭では、実験性・革新性のある長編作品を対象とするコントルシャン賞に輝いています。

　飛行機が墜落、パラシュートで脱出した少年は不思議な島に降下した。そこで、黒い影のような巨人に追われ、森に逃げ込んだ少年は、そこで１台のオ−トバイと地図を見つける。
　少年は、巨人から逃れ、一羽の小鳥と共に、人里目指してオートバイで走り出すが……

　たったひとりで長編アニメ映画を作ってしまった、と言うエピソ−ドは、新海誠の出世作「ほしのこえ」を連想させますし、命を吸い取る黒い影のような巨人の姿形には宮崎アニメの影響を強く感じます。そんな作品がラトビアから生まれる事が意外にも思いましたが――今や、ネット配信サービスにより、世界の何処でも多様な映像作品を観られるようになり、尚且つ、コンピューターを使いこなす事でアニメはひとりでも作る事が出来るものとなっています。最早、アニメは世界中、何処からでも生まれるものとなった、と言う事かも知れません。

　アニメ作品としては、アニメーションの動きに稚拙な部分を感じはしますが、輪郭線のない”色の塊”が動く、と言う独特の作風は、正に３Ｄ−ＣＧ世代ならではのもの。いささかゲーム風ではあるものの、それでも風景の美しさと、作り上げた世界観はなかなかで、思わず引き込まれそうになる見事なシーンが幾つもありました。
　ただ、台詞が一切なく、簡素な筋運びで、物語と言うよりも世界を見せる作品としては、８１分はいささか長く、終盤、ちょっと眠くなってしまいました。

　それでも、かつての新海誠がそうであったように、ひとりでこれだけのアニメを作り上げた、この新たな才能のこれからには期待したい所です。　
　

　（２０２０年　１２月１３日　Ｔ−ＪＯＹ横浜にて）

（作品データ）

　■監督・製作・編集・音楽

ギンツ・ジルバロディス

　■出演

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