Ｅｍａ
エマ、愛の罠

　これは、「ジャッキー　ファーストレディ　最後の使命」などで知られる、チリを代表する映画監督パブロ・ララインの新作で、レゲトン（プエルトリコ版レゲエを源流とするラテンアメリカ音楽）を印象的に使ったサスペンス。
　主演は、ラライン監督自身が発掘し、本作が映画初主演となるマリアーナ・ディ・ジローラモ。挑むような目つきが印象的で、存在感抜群。彼女は確かに逸材で、この映画を背負う存在であるのは間違いのない所です。
　共演は、ガエル・ガルシア・ベルナル。

　若きダンサーのエマは、後悔の念に苛まれていた。振付師の夫、ガストンは不能で、養子として迎えたコロンビア移民の７歳の少年ポロは放火事件を起こして、児童福祉局に引き取られてしまったのだ。
　やがて、ガストンの結婚生活が破綻したエマは、ダンサー仲間の家に身を寄せ、ガストンが嫌っていたストリートダンスで、情熱的なレゲトンのリズムに身を委ねていく――だが、その中でもポロを取り戻す為、エマは余りにも背徳的な計画を画策して……

　この映画、若く、奔放なダンサーが、不能の夫に愛想を尽かし、養子の子を取り戻して新たな生活を築く、と言う物語。
　映画を彩るレゲトンは耳に新鮮な刺激を与え、ダンスシーンは文句なく見事。マリアーナ・ディ・ジローラモの魅力を引き出しつつ、それに負けない映画の絵作りにも感心しました。
　ただ、この映画、語り口が不親切なのと、エマの心理描写を欠く印象で、ドラマにどうにも感情移入出来ませんでした――ひょっとしたら、音楽で、その心境を語っていたのかも知れませんが……

　また、エマが新たな生活を築くに至った、そのやり方と、結末には唖然。
　養子の子、ポロの新たな里親夫妻が、妻が同性愛者でセックスレスだと言うのをいい事に、妻と夫の両方と肉体関係を持った上で妊娠、夫・ガストンには若い女をあてがって性的能力復活させて復縁、最後は、二組の夫婦が同居して、ポロとエマの子供を兄弟として育てる、と言う複雑怪奇な家族を築くに至る、と言う……いくら、ラテン系が性的に奔放とは言え、これはさすがにないだろう、と呆れてしまいました。　
　

　（２０２０年　１０月　４日　Ｋｉｎｏ　Ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

パブロ・ラライン

　■出演

エマ　・・・　マリアーナ・ディ・ジローラモ
　
ガストン　・・・　ガエル・ガルシア・ベルナル

（その他のキャスト）
　パオラ・ジャンニーニ　　サンティアゴ・カブレラ　　クリスティアン・スアレス

　■コピー

きわめて不道徳

　■Ｌｉｎｋ

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