これは、様々なコスプレをした家族の写真をまとめた写真集「浅田家」で第３４回 木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志の実話を二宮和也主演で映画化したもの。
　監督は、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太。

　浅田家の次男坊として生まれた政志は、誕生日に父からカメラを譲り受けたのをきっかけに、写真好きとなり、写真の専門学校を卒業するも、その後の進路を決められず、ふらふらしていた。
　そんな中、「なりたい自分になる」をテーマに様々なコスプレをした写真を撮影……それが世に認められ、政志は写真家になった。
　２０１１年３月、東日本震災で、かつて政志が家族写真を撮った一家が被災した事を知った政志は東北に赴く……だが、震災後の混乱でその行方は掴めず、政志は被災写真を洗って返すボランティアに参加するようになる。
　そんなある日、政志は津波で父親を失った少女から「家族写真を撮って欲しい」と言われて……

　中野量太監督については、これまであまりいい印象がありませんでした。その突拍子もない感覚が理解出来ず、代表作とされる「湯を沸かすほどの熱い愛」については、どうしてあれで感動出来るのか思った程――実際、あれは賛否両論ある映画だと思いますが。
　その後の「長いお別れ」も、ドラマを盛り上げる所や、涙を誘う場面が「そこ？」と思わされたりもしましたが……本作の主人公、浅田政志は、これがまたいい感じに突拍子もなく、尚且つ、それが実在の人物である、と言う縛りがいい方向に作用したようで、これは今までに観た中野監督作品で一番、と言える出来になっています。

　主演の二宮和也はなかなかのハマリ役。２０歳の頃からを演じているのですが、持ち前の年齢不詳さも効果的でいい感じです。
　脇を固める俳優陣も実力派揃い。初見から暫く、気づかせない程らしさを消した菅田将暉など、主役級も数多く出演する豪華キャストです。

　映画としては、政志が写真家となった所で終わりにしてもよさそうなものですが、本作は、そこから東日本震災エピソードを描きます。
　津波被災地の様子など当時の再現は、記憶に新しいだけになかなか難しい部分はあったと思うのですが、大規模のオープンセットを組み、再現をしているのは大したものです。
　その中で、写真の持つ意味、そして家族写真に占める“お父さん”の存在を示す、思わぬ感動エピソードへ……この辺り、展開にいささか強引、かつ唐突な感じがするのが中野監督らしいが、しかし、これには泣かされてしまいました。


ＰＳ
　上映回は、初日舞台挨拶の中継あり。ただ、その舞台挨拶で、事もあろうに、プロローグとエピローグのエピソード、その最後のドンデン返しのネタバレを、浅田政志本人がやってしまうとは……
　

　（２０２０年　１０月　２日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

中野量太

　■出演

浅田政志　・・・　二宮和也
浅田幸宏　・・・　妻夫木聡
浅田章 　　・・・　平田満
浅田順子　・・・　風吹ジュン

川上若奈　・・・　黒木華

（その他のキャスト）
　菅田将暉　　渡辺真起子　　北村有起哉　　野波麻帆

　■コピー

それは、一生に一枚の家族写真。

　■Ｌｉｎｋ

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