ブリング・ミー・ホーム
尋ね人

　これは、「宮廷女官チャングムの誓い」で韓国の国民的女優となったイ・ヨンエの「親切なクムジャさん」以来、１４年ぶりとなる映画復帰作。
　監督は、本編で長編劇映画デビューのキム・スンウ。

　看護師として働くジョンヨンと、教師だった夫ミョングクは、６年前に失踪した息子ユンスを捜し続けていた。
　その捜索の最中、夫は事故で命を落としてしまう。憔悴したジョンヨンの元に、報奨金と引き替えに「郊外の漁村にある『マンソン釣り場』でユンスに似た少年を見た」という情報が寄せられた。
　漁村を訪れたジョンヨンだが、そのマンソン釣り場に、ユンスらしい少年の姿はなく、地元の警官も覚えがないと言うのだが……

　これは、韓国でも問題視されている失踪事件や、児童労働などを背景にした社会派映画、と思っていたのですが……ジョンヨンは、悪意あるいたずらで夫を失い、善意の通報は、実の弟に隠蔽された上で高額で売りつけられ、挙げ句に辿り着いたマンソン釣り場は汚職警官が支配しており、行き場のない元犯罪者を不当に安く働かせている有様。しかも、そこでは誘拐して来た児童を働かせ、更に、性的暴行まで加えていると言う、主人公以外の大半が悪党、と言う救いのない設定。
　映画途中で、そうか、これは悪党を倒してカタルシスを得る類いの映画だったか、と思い直したのですが、確かに、ジョンヨンによる逆襲はあるものの、これも、カタルシスを与えるに至らず、不完全燃焼気味に終わってしまいます。
　最後のドンデン返しと、ハッピーエンドもなんだかとってつけたような感じで、社会派にもエンターテイメントにも振り切れていない、中途半端な仕上がりは韓国映画としては珍しいのではないでしょうか？キム・スンウ監督の未熟さが露わになったように思います。
　

　（２０２０年　９月２１日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

キム・スンウ

　■出演

ジョンヨン　・・・　イ・ヨンエ

（その他のキャスト）
　ユ・ジェミョン　　イ・ウォングン　　パク・ヘジ ュン　　ホ・ドンウォン　　ペク・チュヒ　　チン・ユヨン　　チョン・エファ

　■コピー

その日まで、笑顔は封印した。

　■Ｌｉｎｋ

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