ソニア
ナチスの女スパイ

　これは、第二次大戦中、スウェーデンとナチス・ドイツの二重スパイとして活動していたノルウェー女優の実話を映画化したもの。
　出演は、「ヘラクレス」のイングリッド・ボルゾ・ベルダル。監督は、ノルウェーの俊英イェンス・ヨンソン。

　第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの占領下にあるノルウェー。国家弁務官ヨーゼフ・テアボーフェンは、人気女優のソニア・ヴィーゲットの人気に目を付け、彼女をプロパガンダに利用しようとしていた。
　一方、隣国スウェーデンはで、ナチス・ドイツを警戒し、情報収集に躍起になっていた。スウェーデンの諜報部は、密かにソニアに接触し、テアボーフェン経由でナチスの情報を得るべく、スパイ活動を依頼。ソニアは、反ナチス活動で逮捕された父親を解放させるため、テアボーフェンに接近。やがて、ソニアはテアボーフェンの寵愛を受けるようになり、信頼を得て行く。
　そんなある日、ソニアは、テアボーフェンからナチスのスパイとして北欧諸国の情報を収集するよう依頼されて……

　人気女優が二重スパイとして活躍していた……と言う、魅力あるエピソードを元にした物語ですが、これがどうにもピリっと来ない仕上がりです。
　諜報活動は素人なれど、演じると言う事についてはプロのソニアが、ナチス・スウェーデン・連合軍と言う三つ巴の諜報戦を戦い抜いたと言う本筋の面白さが、リアリティの欠如や、盛り上がらないサスペンスなどで減殺されてしまっている感じがします。その一方で、物語はテアボーフェンと、デンマークの若い外交官との間で揺れる女心を描く、恋愛劇に寄り道をし……中盤は、スパイサスペンスと言うよりも、恋愛メロドラマの感があります。

　また、ソニアは、１９１３年生まれだから、当時はまだ３０前。１９８０年生まれのイングリッド・ボルゾ・ベルダルは、彼女を演じるには貫禄があり過ぎるように感じました。

　映画としては変に浮ついた部分がなく、抑制の効いた演出にも好感の持てる、大人の観賞に堪えるものであるだけに、スパイサスペンスと恋愛メロドラマの間でどっちつかずとなっているのが勿体なく思えました。
　

　（２０２０年　９月１２日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

イェンス・ヨンソン　

　■出演

　ソニア・ヴィーゲット　・・・　イングリッド・ボルゾ・ベルダル

　ヨーゼフ・テアボーフェン　・・・　アレクサンダー・シェーア

（その他のキャスト）
　ロルフ・ラスゴード　　ダミアン・シャペル　　エドヴィン・エンドレ

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