ＧＯＯＤＢＹ
ＲＩＣＨＡＲＤ！
グッバイ、リチャード！

　これは、余命半年の大学教授をユニークに描いた人間ドラマ。
　主演は、３０年ぶりのインディペンデンス系映画の出演となるジョニー・デップ。

　博学でエレガント、芸術家の妻と美しい娘と暮らす大学教授のリチャードは、ある日、末期の肺がんである事を告知され、「治療して１年、しなければ半年」との余命を告げられる。
　更に、娘はレズビアンである事をカミングアウト、妻には上司との不倫を告白され、それまでの日常は一変した。
　死を前に怖いものなしになったリチャードは、残りの人生を自分のために謳歌しようと決心。妻子にも、あけすけな物言いをするようになり、大学の講義も好き放題。ルールや立場に縛られない生き方を始めるが……

　この映画、難病ものとカテゴライズされるものでありながら、ジョニー・デップの奔放なイメージを活かし、時に社会のルールやモラルから脱線することで、湿っぽくなりがちなこの種の物語に、刺激とユーモアを与えようとする試みとしては面白いと思いました。
　ただ、この映画、妻の不倫を否定的に描き、フェミニストの女学生を批判し、蔑ろにするのを肯定的に描くなど、いささか男性的かつ保守的な色合いが強いのが気になりました。

　目前に迫った「死」を突きつけられなければ、妻子に向き合う事も、学生に真に「人生で大切なもの」を教える事も出来なかった主人公の姿には、人間性と人生と言うものについて考えさせられます。
　ただ、そんな人生の最期に直面した男の解放を、ジョニー・デップと言う俳優のイメージを借りなければ描けなかった事、そして、人生の「大切なもの」を台詞で語るばかりの描写は、いささか凡庸ではないでしょうか？そして、最後、誰しもが逃がれられない「死」から逃げたようにも思える描写には、ちょっと物足りなさも感じてしまいました。
　

　（２０２０年　８月２３日　Ｋｉｎｏ　Ｃｉｎｅｍａ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ウェイン・ロバーツ

　■出演

リチャード　・・・　ジョニー・デップ

（その他のキャスト）
　ローズマリー・デウィット　　ダニー・ヒューストン　　ゾーイ・ドゥイッチ　　ロン・リビングストン　　オデッサ・ヤング

　■コピー

人生はくそったれで、
愛おしい。

　■Ｌｉｎｋ

http://goodbye-richard.jp/

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