ブックスマート
卒業前夜のパーティーデビュー

　これは、女優オリヴィア・ワイルドによる監督デビュー作。
　出演は若手中心。主演のビーニー・フェルドスタインは、俳優、ジョナ・ヒルの妹。高い演技力だけでなく、体型も似てしまっています。

　ハイスクールでは優等生で生徒会長を務め、卒業後は名門・イェール大への進学も決まっているモリー。親友は成績優秀な慈善家のエイミーで、２人揃ってガリ勉の堅物として校内では煙たがられていた。
　だが、卒業式前日、遊び惚けていたはずの同級生も名門大学への入学が決まっている事を知り、ショックを受ける。
　こうなったら卒業パーティーで、３年分を遊び倒してやる、と意気込むのだが、堅物の２人はパーティーに招待されておらず、会場が何処かも判らない。２人はあれこれ策を講じてパーティー会場を探し出し、乗り込もうとするのだが……

　地味な高校生がプロムに向けて一念発起、と言う青春映画は数多く、大抵は純情チェリーボーイが主人公だったりするのですが、本作は、ガリ勉優等生の女子ふたりを主人公にしている、と言うのが珍しい……実際、青春映画全体に枠を広げても、主人公のタイプとしては珍しいキャラクターになるのではないでしょうか？

　学校は、富裕層の子女が通う、リベラル色の強い学校と言う設定で、生徒はみな私服だし、トイレは男女共用のジェンダー・ニュートラル。エイミーがレズビアンで同級女子の告白しようとしても、誰も驚かない、など、日本人的には自由奔放に過ぎるのでは、と思ってしまいますが、これが現代のアメリカのハイスクールと言うものらしい……
　あと、いつも思うのだけど、アメリカの高校生が開くホームパーティーと言うのは、どうにも理解出来ないなぁ。

　ただ、モリーの「３年間損した、自分も遊んでおけばよかった！」と言うパーティー参加動機は、日本人にこそ理解し易いものに思えます――アメリカ人の感覚としては「他人はどうあれ、自分は自分」が普通だろう――それを、アメリカ人にも理解し易いように、モリーとエイミー、パーティーよりも片思いの相手への告白が本心だと言う理由もつけられてはいるのですが。

　オリヴィア・ワイルド監督、映画女優らしく、女優を綺麗に写しています。特に、パーティー会場のプールの水中撮影は印象的。　
　また、悪者を作らないのも好印象。冒頭、モリーにショックを与えた遊び好きの女子とも、ちゃんをわかり合えるシーンを作っています。これにはちょっとホロリとしてしまいました。

　物語は、前半、会場探しのドタバタコメディを見せ、パーティー会場ではお約束の失恋を描きます。
　最後、卒業式とその後がちょっとモタつく感があるものの、新たな出会いと別れを描いて感動的に締めくくると見せてひっくり返す辺り、最後までコメディセンスを見せるのもいい。
　これは面白くて、気持ちのいい映画でした。　
　

　（２０２０年　８月２３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

オリヴィア・ワイルド

　■出演

モリー　　・・・　ビーニー・フェルドスタイン
エイミー　・・・　ケイトリン・デヴァー

（その他のキャスト）
　ジェシカ・ウィリアムズ　　リサ・クドロー　　ウィル・フォーテ　　ジェイソン・サダイキス　　ビリー・ロード　　ダイアナ・シルヴァーズ
　スカイラー・ギソンド　　モリー・ゴードン　　ノア・ガルヴィン　　オースティン・クルート　　ヴィクトリア・ルエスガ
　エドゥアルド・フランコ　　ニコ・ヒラガ　　メイソン・グッディング

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