これは、既にアニメ化や舞台化もされた渡辺航の同題の少年漫画を、Ｋｉｎｇ＆Ｐｒｉｎｃｅの永瀬廉主演で実写化した青春スポ根映画。
　監督は、「“隠れビッチ”やってました。」の三木康一郎。共演は、「惡の華」の伊藤健太郎に、「かぐや様は告らせたい」の橋本環奈。

　アニメが好きの孤独な少年、小野田坂道。毎週、自宅の千葉から秋葉原まで往復９０kmを自転車で通っていた事が、彼に人並み外れた脚力を与えていた。
　その走りを自転車l競技部の１年生・今泉に認められ、自転車競技部に入部した小野田は、自転車選手としての思わぬ才能を発揮。仲間と共に走る事に喜びを見出していく……
　
　原作漫画は、６８巻を刊行して続刊中、と言う大長編であり、その中で、ロードレーサー（競技用自転車）とママチャリとの違いや、変速ギヤの使い方、ポジションの重要性、自転車競技における様々などが丁寧に説明された上で、ライバルの人間性などもきっちり描かれて来たのが、この「弱虫ペダル」の世界。
　それを、２時間の映画の枠内で起承転結つけて終わらせる為に、この映画版はかなり大胆に構成が変更されています。
　前半に学校の裏門坂での今泉とのレース、中盤の新人歓迎レース、クライマックスになるのはインターハイ予選となる県大会、と３つのレースを配置、ここに原作漫画の印象的なシーンや台詞を盛り込んで、初見の人から、原作漫画ファンまで、まずは納得させる内容としてまとめているのは大したもの。
　ただ、その分、原作で丁寧に説明された自転車競技に関わるあれこれは省かれてしまいましたし、ライバルや、上級生などの人現模様も大きく割愛されています。物語も、青春映画の定番展開とも言える敗戦と挫折を盛り込む事が出来ずに登り一本調子――これはこれで小野田坂道の物語っぽくはありますが――となり、更に、せっかく橋本環奈を起用しながらも、恋愛エピソードも入りませんでした。

　永瀬廉、伊藤健太郎ら俳優も多くのシーンで実際に自転車を漕いでいるレースシーンの迫力もなかなかですが、惜しいのは、登りなのに汗だくになっている感がない事でしょうか……若手俳優によるスポ根映画にはありがちではあるのですけど。

　それでも、クライマックスの県大会のレースは力が入ったし、孤独な若者が、“責任と信頼”の大事さを知り、居場所を得る物語には感動しました……その点では確かによく出来た青春映画なのですが、大長編の原作を、小さくまとめてしまった感じがあるのはちょっと勿体なく思えました。　
　

　（２０２０年　８月１５日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

三木康一郎

　■出演

小野田坂道　・・・　永瀬廉
今泉俊輔　・・・　伊藤健太郎
寒咲幹　・・・　橋本環奈

（その他のキャスト）
　坂東龍汰　　竜星涼　　�蜿r太郎　　菅原健　　井上瑞稀　　皆川猿時

　■コピー

青春を走れ。
希望をつなげ。

　■Ｌｉｎｋ

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