これは、「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」シリーズなどを手がけてきた脚本家・古沢良太によるテレビドラマシリーズ「コンフィデンスマンＪＰ」の劇場版第２弾。
　監督は前作に引き続き田中亮。主演は長澤まさみ、東出昌大、小日向文世らお馴染みのメンバーに加え、本作で“プリンセス”となる子猫ちゃんを、「町田くんの世界」の関水渚が演じます。

　シンガポールの大富豪一族・フウ家の当主であるレイモンド・フウが他界。ブリジット、クリストファー、アンドリューの３姉弟が遺産相続を巡り火花を散らす中、フウ家の執事トニーはレイモンドの遺書を公開。そこには、行方知れずの隠し子、ミシェル・フウを次期当主とし、１０兆円にもなる資産を相続するとあった。
　ミシェル探しが始まる一方、世界中から詐欺師たちが我こそはミシェルだと名乗りを上げる中、ダー子も“おサカナ”を釣り上げるべく、身寄りのない少女”コックリ”をミシェル・フウに仕立てて乗り込むのだが……

　このシリーズは、終盤のドンデン返しで一攫千金を得るするダー子らコンフィデンスマンのコンゲームが見所。本作では、多少のマンネリ感は出て来たものの、口八丁手八丁ぶりに一層磨きをかけてきたダー子らに、おサカナたちのゴージャスさもスケールアップ。豪華海外ロケに加え、世界的富豪をシンガポール華僑として、日本人が演じても――ビビアン・スーは台湾人だけど――違和感がない、と言う設定としたのも巧みで、日本映画らしからぬ世界観を見せています。

　ダー子を演じるのは既に「コンフィデンスマンＪＰ」劇場の座長として貫禄さえ出て来た長澤まさみ。今回は役の幅こそ狭いものの、華麗なドレス姿は眼福。いつもの陽気で素直なダー子を演じているものの、大勝負を前にしてコックリに、
　「あんたがやるのよ」
　と目の座った表情で、ドスを効かせて言い聞かせるのには、「ＭＯＴＨＥＲ」で見せた鬼母の表情に通じるものがあったり……

　本作の仕掛けるコンゲームは、実は観客に向けられています。
　いや、勿論、劇中でもコンゲームは仕掛けられ、いつものように赤星が嵌められるのですが――今回は、観客にとって明らかに見え見えで、ドンデン返しにもなりゃしない……と思っていた所で、映画は、まさかの瓢箪から駒、詐欺師が本物のプリンセスを作り出してしまう予想外の感動ストーリーにしてしまうのです。
　「あなたは何にでもなれる」
　と言うダー子の言葉を詐欺ではなく真実の言葉とし、関水渚も、それに応えて醜いアヒルの子が白鳥となる様を演じて見せるのです。
　彼女なら、巨万の富を相続する資格あり、と納得させる、シンデレラストーリーで、終盤は涙するシーンの連続……こんな話だとは思っていなかった、と観客を嵌める、見事なコンゲーム。これにはやられました。
　

　（２０２０年　７月２４日　川崎　チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

田中亮

　■出演

ダー子　・・・　長澤まさみ
ボクちゃん　・・・　東出昌大
リチャード 　・・・　小日向文世

コックリ　・・・　関水渚

ブリジッド・フウ　・・・　ビビアン・スー
クリストファー・フウ　・・・　古川雄大
アンドリュー・フウ　　・・・　白濱亜嵐

レイモンド・フウ　・・・　北大路欣也

（その他のキャスト）
　小手伸也　　織田梨沙　　瀧川英次　　前田敦子　　滝藤賢一　　濱田岳　　濱田マリ　　デヴィ・スカルノ　　石黒賢　　生瀬勝久　　柴田恭兵　　
　竹内結子　　三浦春馬　　広末涼子　　江口洋介

　■コピー

本物のも偽物もない 信じればそれが真実

　■Ｌｉｎｋ

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