ステップ

　これは、重松清の同題小説を山田孝之主演で映画化したもの。
　監督は、「虹色デイズ」の飯塚健。

　結婚３年目、３０歳で、健一は、妻を亡くし、２歳の娘・美紀とのふたり暮らしとなった。
　そんな健一に、義理の父母は美紀の面倒を見ると言い、不妊症に悩む義理の兄夫妻は美紀を養子にしてもいいと言ったが、健一は男手一つで育てると決意する。そして、子育てと仕事の両立のため、トップセールスマンとして認められていた営業職から、時短勤務が許される部署へ異動したが、慣れない家事と仕事の両立に四苦八苦。
　時に悩み、もうダメかも知れない、と弱音を吐きながらも、健一は周囲の人にも助けられ父娘の暮らしを続けて……

　映画は、美紀が保育園に通うようになってから小学校卒業までの１０年間を描きます。
　物語としては妻の死で始まり、義理の父の死で終わるのですが、この映画、その「死」をはっきりと描きません。日本映画らしからぬあっさりした描写は、個人的には好印象ですが……感動のヒューマンドラマの割には、そうした「泣かせる」部分がなく、泣ける映画の作りになってないのは、映画に「泣ける感動」を求める人（最近多い）には物足りなく感じられるかもしれません。
　その一方で、市井の人の小さな話なのに、台詞も名言ばかりで、何とも立派な話になってしまっている印象。ある意味、原作小説の“言葉”に頼り過ぎている感じもありますし、そうした言葉の力を活かそう、と台詞で語り過ぎているようにも感じました。この辺り、映画としては、もっと映像の力を見せて欲しかったように思います。
　そして、出て来る人がみな善人で、悪い人がいません。また、そんな中で、健一が周囲の女性に助けられ続ける――同僚の女性から、保育園のケロ先生、カフェの店員まで――のも、ちょっと不自然と思えてしまいました。

　美紀役は子役で３人で演じ分けるのも厳しい所――さすがに２歳から１２歳では、ひとりの子役では到底無理――その中では、６〜８歳を演じた白鳥玉季がいい、と言うより上手過ぎます。表情も大人びているので、１２歳を演じた中野翠咲になった時、むしろ年齢が逆戻りしたんじゃないか、と言う違和感を感じてしまったほどです。
　その意味では、これはむしろアニメにした方がよかったのではないかなぁ、と思ってしまいました。
　

　（２０２０年　７月１８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

飯塚健

　■出演

武田健一　・・・　山田孝之
武田美紀 ９〜１２歳　・・・　田中里念
武田美紀 ６〜８歳　・・・　白鳥玉季
武田美紀 ２歳　・・・　中野翠咲

（その他のキャスト）
　伊藤沙莉　　川栄李奈　　広末涼子　　余貴美子　　國村隼　　角田晃広　　片岡礼子
　岩松了　　日高七海

　■コピー

僕と娘の１０年間、
天国の君との１０年間。

　■Ｌｉｎｋ

https://step-movie.jp/

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