コリーニ事件

　これは、ドイツで現役の弁護士として活躍するフェルディナント・フォン・シーラッハのベストセラー小説を映画化した法廷サスペンス。

　新米弁護士のカスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命される。だが、被害者の実業家、ハンス・マイヤーはライネンの育ての親も同然の恩人だった。弁護を辞退しようとしたライネンだが、重大事件であり、かつての恩師に焚き付けられた事もあり弁護を引き受ける事にする。
　容疑者でイタリア出身のコリーニは、事件について一切口を閉ざしているが、ライネンは事件を深く調べていくうち、ハンス・マイヤーの思わぬ過去に直面する事になる……

　これは、ドイツならではのナチス・ドイツ時代の負の遺産に向き合うドラマですが、ユダヤ人は登場せず、主人公がトルコ系、と言う異色の組み合わせになります。
　確かに、ホロコーストはナチスの大きな人道的犯罪ですが、ナチスの支配下ではそれ以外にも様々な問題が起きていたのです。それを取り上げた着眼点はよく、それが原作小説をベストセラーにした要因のひとつだったようにも思います。

　映画は、その過去の謎解きを中心に、主人公の過去を描くのですが……この主人公の過去が、ドラマとして活かされていないように感じられるのが惜しい。むしろ、映画の印象をぼやかしてしまったようにも感じられ、この辺り、見せ方にも工夫が欲しかった所です。
　また、法的劇ではあるものの、ディベートの面白さはあまりなく、最後の決着も不完全燃焼の感が強いもの。
　確かに、映画で取り上げた問題は、現実には解決された訳ではない、と言う辺りが、物語をこんな形にしたのでしょうし、安易なハッピーエンドにしなかったのもまたドイツ人の生真面目さ、と言う所だとは思うのですが。
　
　ナチスの犯した様々な過去の人道的犯罪に対し、真摯に向き合って来たかのように見えるドイツにしても、このような法律を作り、当事者らが逃げ切りを図った、と言う事は、「過去に向き合う」事の難しさを示しているように思いました。
　

　（２０２０年　６月１３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

マルコ・クロイツパイントナー

　■出演

カスパー・ライネン　・・・　エリアス・ムバレク

ファブリッツオ・コリーニ　・・・　フランコ・ネロ

ハンス・マイヤー　・・・　マンフレッド・ザパトカ

（その他のキャスト）
　アレクサンドラ・マリア・ララ　　ハイナー・ラウターバッハ　　ジャニス・ニーヴナー　　ライナー・ボック　　カトリン・シュトリーベック　　ピア・シュトゥツェンシュタイン

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　■Ｌｉｎｋ

https://collini-movie.com/

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