これは、韓国映画同題映画を台湾の新鋭ギャビン・リンがリメイクしたラブストーリー。
　２０１８年の台湾国内ナンバーワンヒット作です。

　新曲のレコーディングに不満を抱く歌姫A-Linは帰宅中、車の運転手が聴かせてくれた未発表曲「ある悲しみ」に心奪われる。歌っていたのは、音楽プロデューサー“Ｋ”ことチャン・チォカイ。作詞は“クリーム”ことソン・ユェンユェン。
　運転手の紹介で当時の２人を知るパンに会いに行ったA-Linは、この曲に秘められた悲しい物語を知る――

　身寄りのない孤独な男女が出会い、一つ屋根の下で共に暮らし、そして、難病と、泣ける恋愛映画としてはいささかベタな設定のこの映画……まぁ、確かに韓国映画らしいと言えばそうなのですが。
　これを韓国映画でやったら、いささかくどくなりそうですが、そこは台湾映画だけに、笑いや音楽を盛り込んで爽やかにまとめた印象です。
　勿論、それでも物語は作り過ぎで、特に“Ｋ”の想いとその行動は、いささか独善的なものに思えてしまいましたが、事実上のクライマックスとなる結婚式後の“クリーム”視点での回想シーンは、涙、涙のシーンの連続でした――ただ、あんなに寄り添っていた男２人に演技で別の顔を見せ続けた辺り、ちょっと女はコワいなぁ、とも思ってしまいましたが。

　また、登場人物に結果として悪人がおらず、敵を作らないのもこの映画の美点。
　ただ、それ故に、２人の為に婚約破棄するなど人生変えられてしまった歯科医のヤン・ヨウシェンが気の毒に思えてしまいました……もっとも、あの様子だと婚約者とはよりを戻せそうな感じはありましたけど。　

　「悲しみよりもっと悲しいのは孤独に慣れること」と言う、本作のタイトルともなっている台詞、それは家族を失い、孤独になる事の恐れ。“Ｋ”と“クリーム”は孤独だったお互いを“家族”としてしまった事……それ故に、２人にはもう離れる事が考えられもしなかった、と言う物語は心打つものがありますが、家族の絆の強い韓国、そして台湾と比べると、それほどではない日本では共感を呼び難かったりするかも知れません。
　

　（２０２０年　６月　７日　あつぎのえいがかんｋｉｋｉにて）

（作品データ）

　■監督

ギャビン・リン

　■出演

“Ｋ”　チャン・チォカイ　・・・　リウ・イーハオ
“クリーム”　ソン・ユェンユェン　・・・　アイビー・チェン

ヤン・ヨウシェン　・・・　ブライアン・チャン

A-Lin　・・・　本人

（その他のキャスト）
　アニー・チェン　　エマ・ウー　　ハー・ハオチェン　　ダーチン　　シー・チーティエン　　ヤオ・アイニン

　■コピー

キミは優しい嘘をついた。

　■Ｌｉｎｋ

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