ＰＯＰ　ＳＴＡＲ
ポップスター

　これは、ナタリー・ポートマンが主演・製作総指揮を兼任した音楽ドラマ。
　監督は、「シークレット・オブ・モンスター」のブラディ・コーベット。

　中学のクラスメイトによる銃乱射事件で死の淵から生還したセレステ。姉のエレノアと作った曲を追悼式で歌ったことをきっかけに、プロデビューしたセレステは、敏腕プロデューサーの力添えもあって、一躍スターダムへ上り詰めていく――１８年後、かつてのトップシンガーのセレステが再起をかけるツアーの初日を前にして、またしても事件が起きる。銃による無差別殺人犯は、かつて、セレステがパフォーマンスの際に被っていた仮面をつけていた……

　この映画、ラフィー・キャシディーがセレステを演じる少女時代に対し、ナタリー・ポートマンが演じる現在のパートの出来が酷い……まるで別の映画となってしまったようなちぐはぐさがあり、映画の描写としても納得出来ないものばかりです。
　確かに、銃による無差別殺人事件の被害者だったトラウマを、信仰と姉妹愛で克服して歌姫に……と言う物語はドラマチックなのですが、後半は迷走気味のように思えます。むしろ、このテーマを活かすならば、無差別テロ事件により、過去のトラウマが呼び覚まされて歌えなくなったセレステのカムバックを描いた方が、前半部とも対比としてもよかったのではないでしょうか？

　製作総指揮も務めるナタリー・ポートマンは、さすがに気合いが入っており、渾身のステージパフォーマンスは圧巻でしょう――ちなみに、振り付けは彼女の夫、ベンジャミン・ミルピエが担当しています。
　少女時代の清純さも何処へやら、素顔さえ判らない厚化粧は――それも狙いかも知れませんが――ナタリー・ポートマンらしさをすっかり消してしまっていますし、すっかり性悪となって、周囲に悪態とつき、酒と麻薬に逃避するセレステを延々と見せるのもどうかと思います。これが、ラストのセレステのステージパフォーマンスを感動出来るものではなくしてしまっているよう。
　ブラディ・コーベット監督、様々アイデアと描写を本作に盛り込んだはいいのですが、いささか“策士、策に溺れる”の感があり、そして、「シークレット・オブ・モンスター」でも感じましたが、人間を露悪的に描く事がアーティスティック、と言う変な勘違いをしているような気がしてなりません。
　

　（２０２０年　６月　８日　Ｋｉｎｏ　ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ブラディ・コーベット

　■出演

セレステ（現在）　・・・　ナタリー・ポートマン
セレステ（少女時代）／アルビー　・・・　ラフィー・キャシディ

マネージャー　・・・　ジュード・ロウ

ナレーション　・・・　ウィレム・デフォー

（その他のキャスト）
　ステイシー・マーティン　　ジェニファー・イーリー

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