囚われた国家

　これは、「猿の惑星：創世記」のルパート・ワイアット監督によるＳＦサスペンス。

　地球外生命体（エイリアン）による地球侵略により、人類は地球外生命体を「統治者」と呼び服従する事になった。
　それから９年後の２０２７年。統治者による徹底した監視体制が敷かれ、ルールを破れば地球外の何処かへ流刑となる。文明は後退し、貧富の差は拡大した。そんな中、自由を取り戻すためレジスタンス・グループは、団結集会に統治者が現われるとの情報に、爆弾テロを企てるが……

　この映画、かなりの低予算映画。
　予告編で印象的に使われた巨大ロボット兵器は背景としてそこにあるだけで、結局微動だにしませんし、確かに名優ではあるものの、ジョン・グッドマンをスター扱いでキャスティングする、と言うのも苦しい懐事情を感じさせます。
　また、世界観の構築や、ビジュアル設定も貧弱で、人類を屈服させた高度な知性と科学力を併せ持つ筈のエイリアンが、これまたぬめぬめしたクリーチャーで、あまり知性ある振る舞いを見せず、戦いにしても肉弾戦に終始、と言うのも類型的。また、エイリアンの対人類用の戦闘員”ハンター”はまるでプレデターです。

　ただ、そうした期待外れと言うか拍子抜けするような部分を除くと、物語がテーマとするものはなかなか興味深い部分があります。
　それは、支配に対する抵抗――国を支配され、好きなように搾取される立場となったら、どうするか。そうなったら勿論、抵抗し、戦うのですが……その方策は、やはりテロリズムとなってしまう。
　対テロ戦争を謳い、テロリストを悪魔のように罵るアメリカ人だって、いざ、理不尽に支配されたらテロに打って出るのだ、と言うのは皮肉ですし、そうして人々の反抗心に火を点ければ、それが世界を巻き込む大火になる、と言うのも、幾つもの史実から頷かされます。
　そして、最後に、いささかヒロイックに描かれるのが自爆テロなのですから……
　立場が違えば、テロリストは英雄であり、それが現実をカリカチュアライズしたものであるとしたら、今、世界で起きている事は何なのだ、と言う事を観客に問いかける――こんな映画を作ってしまうのがアメリカ映画の懐の深さでしょう。
　それでも、この内容ではさすがにメジャー映画には出来ません。これが、インディペンデントの低予算映画でしか出来なかった事を納得しました。
　

　（２０２０年　４月　５日　Ｋｉｎｏ　ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ルパート・ワイアット

　■出演

ジョン・グッドマン　　ベラ・ファーミガ　　アシュトン・サンダース　　ジョナサン・メジャース　　コルソン・ベイカー

　■コピー

アメリカ陥落から９年――。
従うか？抗うか？
どちらか選べ。

　■Ｌｉｎｋ

https://www.captive-state.jp/

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