ＣＵＲＥＤ
キュアード

　これは、ゾンビ・ウイルスのパンデミック収束後の世界を舞台にした近未来ホラー・サスペンス。
　「ＪＵＮＯ」のエレン・ペイジが、出演とプロデューサーを兼任。監督のデヴィッド・フレインは、本作で長編映画デビューとなります。

　物語の舞台は近未来のアイルランド。
　人間を凶暴化させる新種の病原体メイズ・ウイルスのパンデミックにより世界は大混乱に陥った。それから６年、人類はメイズ・ウィルスを抑え込み、社会秩序をなんとか取り戻した。
　感染者に対する治療法も見出され、治癒した者は“回復者”として社会復帰する事になったが、回復者に対する差別は激しく、追い詰められた回復者の集団は、治癒しない患者を“処分”すると言う政府方針に反対してテロを計画して……

　これは、異色のゾンビ映画。
　普通は感染爆発……パンデミックによるパニックを描くものですが、これは、その後を描くものとなっています。
　ウィルス感染者は、凶暴化するものの、その間の記憶を残しており、そのトラウマに苛まれる事、そして、感染者に対する健常者の差別が、彼らを追い込んで行く事……更に、パンデミックが社会を変容させてしまう事などを含め、この映画の画く内容は斬新、且つあまりにタイムリー。
　パンデミックの「後」ことが事態収拾の要である、と言う事、そして、第二波の恐怖や、感染症やウィルスと共存していく、と言う事を含め、様々に考えさせられる事がありました。
　そうした問題をじっくりと描いて行く序盤から中盤辺りまではなかなかよく、むしろ最後のパニック描写の方が余計に思えたほどでした。

　低予算映画で、描写には予算の制約による無理があり、その癖、いささか風呂敷を広げ過ぎているのが気になります――デヴィッド・フレイン監督、本作が初監督作品と言う事で、気合いが入り過ぎてしまったのか？――この内容であれば、しっかり予算をかけてもよかったように思いますが……まぁ、製作当時、誰も公開時にはこうなる、と予見出来なかったでしょうからねぇ……


ＰＳ
　先日観た「２１世紀の資本」もそうでしたが、これもまたタイムリーな内容で、劇場は満席でした。

　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

デヴィッド・フレイン

　■出演

エレン・ペイジ　　サム・キーリー　　トム・ヴォーン＝ローラー　　ポーラ・マルコムソン

　■コピー

記憶だけは治らない。

　■Ｌｉｎｋ

http://cured-movie.jp/

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