ビッグ・リトル・ファーム
理想の暮らしのつくり方

　これは、映像製作監督・カメラマンを務めてきたジョン・チェスターが、妻と共に始めた農場暮らしの８年に及ぶ日々を記録したドキュメンタリー。

　ジョンとモリーの夫妻は、殺処分になる所を救い出した保護犬でもある愛犬トッドの鳴き声が原因で、ロサンゼルスのアパートを追い出されてしまう。
　料理家の妻は、本当に体にいい食べ物を作物から育てるため、夫婦で郊外へと移り住むことを決心。２００エーカーもの荒れ果てた農地を買い、夫妻は理想とする自然農園を作ろうとするが……

　荒れた農地を耕し、畑を拓き、様々な果樹を植え、豚や羊、鶏などの家畜も育て、収穫した作物で料理を作る……これは、まるで「鉄腕ＤＡＳＨ」のＤＡＳＨ村みたいな話で、日本ではむしろ新鮮味がないかも知れません。
　化学肥料も農薬も使わない伝統農法を採用するばかりか、農業をその土地に暮らす動植物の“生と死の営み”の一環と捉えるスケールの大きさと、高い理想に基づく農場運営……死から逃げない描写や、農場の為に“殺す”事に苦悩する様をも描くのは好感がもてるものの、それでも尚、いささか綺麗ごとに描いている感じがあります――それは、農場の収支についての描写を曖昧にしている事、そして、現在の農場が多数の見学者を受け入れる一種の“観光農場”となっている辺りを見るに至って、その裏に何かあるのではないか、とさえ思えてしまいます。

　ジョン・チェスター監督は、ネイチャードキュメンタリー作家でもあり、動物の生態描写は秀逸で、映像や構成の完成度も高いのですが、人間に（妻も含め！）あまり興味がなさそうに思えるのも気になりました。夫婦が理想とする農場運営に共感し、共に働く若者たちなど、人間のドラマも見せて欲しかったところです。
　

　（２０２０年　３月２０日　Ｋｉｎｏ　ｃｉｎｅｍａ　みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ジョン・チェスター

　■出演

ジョン・チェスター　　モリー・チェスター　

　■コピー

息を呑むほど美しい。“究極の農場”が出来るまで

　■Ｌｉｎｋ

http://synca.jp/biglittle/

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