屋根裏の殺人鬼
フリッツ・ホンカ

　これは、１９７０年代のドイツで実際に起きた連続殺人事件に基づくハインツ・ストライクの小説「ザ・ゴールデン・グローブ」を映画化したもの。
　監督は、「女は二度決断する」や「５０年後のボクたちは」のファティ・アキン。

　１９７０年、ドイツ・ハンブルグ。安アパートの屋根裏に住むフリッツ・ホンカは、風俗街にある寂しい男女が集まるバー“ゴールデン・グローブ”へやってきては、女性たちに近づいていた。しかし、せむしで乱杭歯の不細工な彼に声を掛けられても、女たちは顔をしかめるだけ。稀に応じる女性がいても、貧しい老女ばかりだった。
　そんなフリッツの住いである安アパートの屋根裏部屋には秘密があった……

　このフリッツ・ホンカと言う男、先日、また映画化されたテッド・バンディとは対極にあるような男です。
　知的でスマートな好青年だったテッド・バンディに対し、ホンカと来たら不細工で、頭も回らず、己を律する事も出来ずに欲望に負けては場当たり的に犯行を繰り返すだけ、と言う――こんな粗い犯行、おざなりな後始末で連続殺人が発覚しなかったと言う事自体、呆れるようなものですが、これは、ホンカと被害者――いや、彼らが集う“ゴールデン・グローブ”と言う存在自体が、第二次大戦後の復興からも取り残されたような存在だったからも知れません。

　映画は、そんなホンカの日常から犯行までを克明に再現。猟奇的なシーンは控えめですが、ホンカの住居の作り込みは、エンドロールで流れる証拠写真の映像そのままと言う感じで――この辺りはドイツ人的職人芸を感じました――悪臭までもが感じられそうな作り込みに加え、登場人物までもがそっくり。
　ホンカの被害者女性たちも事実に基づき高齢者ばかりで、ホンカが幻想を抱く、グラマーな女学生以外は、映画らしい華やかさもなければ、カタルシスもありません……事実上、ゴミ溜めをのぞき込んでいるような気にさせられる映画ですが、それでも、思わずその先を観たくなってしまう、不思議な魅力が感じられました。勿論、好き嫌いは別れるタイプの映画とは思いますが……
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ファティ・アキン

　■出演

フィリッツ・ホンカ　・・・　ヨナス・ダスラー

（その他のキャスト）
　マルガレーテ・ティーゼル　　ハーク・ボーム　　カーチャ・シュトゥット　　バーバラ・クラッベ

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://www.bitters.co.jp/yaneura/

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