仮面病棟

　これは、現役医師・知念実希人による同題のミステリー小説を「屍人荘の殺人」の木村ひさし監督が映画化したもの。

　医師の速水は、先輩医師の依頼で、ある病院の当直医を一日限定で代わることになった。だが、その夜、ピエロの仮面をつけ、銃を持った男が病院を占拠。
　院長は警察への通報をせず、男に金を渡して事を収めようとするが、男は金だけでは満足せず、何かを探して病院内を調べ回るのだった。
　一方、速水は、男に撃たれた女子大生の瞳と共に病院からの脱出を試みるが、その中で、正体不明の入院患者や、使用されていない筈の手術室に整えられた最新機材、隠し病室など、不可解な謎に直面して……

　この映画、権力絡みの医療不正と言う、基本となるアイデアはよく、舞台となった病院の構造などもよく練られていますし、臨時の当直医となった速水を狂言回しとして、観客に近い目線で事件の真相に迫る工夫、真犯人の動機や、トリックなど、ミステリーとしてなかなか凝っていて、話としてはよく出来ています――実際、終了後には観客から「面白かった」の声が幾つも聞こえました。
　また、撮影には１年前まで使われていた廃病院を利用出来た、と言う事で日本映画らしからぬ、リアルで大規模な舞台を使っての撮影が出来ていると言うのも特徴のひとつ。

　ただ、残念ながら映画としての出来はいまいち。
　まず、瞳を演じた永野芽郁の芝居がどうにも一本調子――やはり、彼女は芝居が下手とまでは思いませんが、演技の幅が狭いのではないでしょうか？
　他にも、瞳の受けた銃創がどうにも刃物による裂傷にしか見えないとか、事故などのシーンで、全くサスペンスが盛り上がらない、演出の稚拙さとか……登場人物が限られている割には出入りが多く、煩雑な筋運びや、冗長に過ぎる終盤のネタばらしも、ミステリーとしては残念な部分と思えました。

　邦画にありがちな、人や予算の制約など、問題はあったのかも知れませんが、話としては面白いものを、その面白さを引き出して映画化出来ない辺り、「屍人荘の殺人」もそうでしたが、木村ひさし監督、残念ながら力不足だったんじゃないかなぁ、と言う印象です。
　

　（２０２０年　３月　６日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督

木村ひさし

　■出演

速水秀悟　・・・　坂口健太郎

川崎瞳　・・・　永野芽郁

（その他のキャスト）
　内田理央　　江口のりこ　　大谷亮平　　高嶋政伸　　朝倉あき　　丸山智己　　笠松将　　永井大
　佐野岳　　藤本泉　　小野武彦　　鈴木浩介

　■コピー

病院の仮面を暴け

　■Ｌｉｎｋ

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