初
恋

FIRST LOVE

　これは、昨年のカンヌ映画祭の監督週間に選出されて話題となった三池崇史監督の初の恋愛映画。
　
　期待の新人ボクサー・葛城レオは、思わぬＫ．Ｏ負けを喫した後、病院で診察を受け、脳腫瘍で余命わずかと宣告されてしまう。
　自暴自棄となり夜の歌舞伎町を彷徨っていた彼は、男に追われる少女に助けを求められ、追って来た男に反射的にパンチを喰らわせ、一発で気絶させてしまうが、その男は警官だった。モニカという少女と共にその場から逃げ出したレオは思わぬ騒動に巻き込まれていく……

　この映画、職人監督としてマンガや小説の映画化が続いていた三池監督、久々のオリジナル作品。
　恋愛映画とは言っても、そこは三池監督だけに、主人公レオを巻き込むのは、欲望と憎悪渦巻くヤクザの抗争。ただ、シリアスな裏社会の争いと言うよりはスラップスティックギャグを盛り込んだアクション・コメディ的要素を持っていて、園子温の映画のような趣もあります――もっとも、キメる所はキメて見せる辺りは、三池監督らしい部分ですが。

　主人公のレオを演じた窪田正孝は、体脂肪をヒトケタまで落としてボクサーらしい体型を作っているし、騒動の仕掛け人である若いヤクザを演じた染谷将太のオフビートなノリもいい。こんな染谷将太の曲者ぶりも久々に見ます。
　ヒロインのモニカを演じる小西桜子は、これが劇場映画デビューのど新人――そんな彼女をパンツ丸出しで登場させるのだから三池監督も容赦ありません。
　あと、騒動に絡んで来るチャイニーズ・マフィアの女性幹部を演じた藤岡麻美は、ディーン・フジオカの妹だとか……
　そして、特筆すべきはベッキー――血塗れで下半身は下着姿で、絶叫してバールを振り回すのだから、これは数年前なら考えられない役柄でしょう……あのゲス不倫騒動で、壊れたと言うか、リミッターが外れてしまったように思えます。

　クライマックスのホームセンターでのカーアクションと、店内でのバトルロイヤルは工夫があって面白いし、死ぬつもりだったレオが希望を見た途端に震えが止まらなくなるなどの描写もいい。
　警官隊に包囲されたホームセンターからのまさかの脱出劇がアニメになってしまったのはちょっと残念。これを実写で見せてくれたら……と思いましたが、まぁ、この辺りが邦画の限界でしょうか。
　ラストカットが脳天気に希望を描かないのも好印象で、これが恋愛映画か？と疑問を覚えはするものの、これは面白い映画でした。
　

　（２０２０年　３月　１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

三池崇史

　■出演

葛城レオ　・・・　窪田正孝
モニカ　 　・・・　小西桜子

（その他のキャスト）
　大森南朋　　染谷将太　　ベッキー　　三浦貴大　　藤岡麻美　　顏正國　　段鈞豪　　矢島舞美　　出合正幸
　村上淳　　滝藤賢一　　ベンガル　　塩見三省　　内野聖陽　　三元雅芸　　内田章文　　小柳心　　山中アラタ　　谷嶋颯斗

　■コピー

最期に出会った、最初の恋

　■Ｌｉｎｋ

https://hatsukoi-movie.jp/

［戻る］