野生の呼び声

　これは、１９０３年に出版後、一度も絶盤になった事がないと言うジャック・ロンドンの定番冒険小説を元に、人類未踏の地に旅する男と犬の壮大な冒険と友情を描く映画。
　監督は、「ヒックとドラゴン」のクリス・サンダース。

　１９世紀末のアメリカで、裕福な家のペットだった大型犬のバックは、犬泥棒により盗み出され、ソリ犬としてゴールド・ラッシュに沸くアラスカに売られてしまう。
　郵便屋・ペローの元で、ソリ犬としての適性を示したバックは、やがてリーダーとして活躍するようになる。
　一方、ユーコン川の果て、地図にない地を目指して旅する男ソーントンは、最果ての町でバックに出会って……

　この映画、ハリソン・フォードが主役としてクレジットされていますが、映画の主役はバック。
　力は強いが、浮ついていて我が儘な“腕白小僧”だったバックが、過酷な世界に放り込まれて働くうちに、仲間を作り、信頼を得ると言う事を知って、ひとつひとつ大人へのステップを登り、やがて自分の居場所を築くまでを描く、正当派のビルディング・ロマンになっています。

　そんなバックを始め、登場する犬たちは実際の動物ではなく、シルク・ド・ソレイユのダンサーがモーションアクターを務め、全てＣＧで描かれています。
　ディズニー映画としては既に「ライオン・キング」でも採用されたやり方ですし、クリス・サンダース監督は、アニメのキャリアが豊富なのに加え、「ヒックとドラゴン」では人と動物と言う異種間の友情を見事に描いた事もあり、最早、かなり手慣れた感じです――逆に、バックなど演技過剰で、時に人間臭く見える程です。
　気になったのは、映像から“寒さ”が伝わって来ず、雪上のシーンにどうにも現実味がない事――この辺り、ＣＧで作った世界には、至らぬ事がまだまだある、と言う感じです。

　映画は、ディズニーらしく、やや甘口に仕上げられてはいるものの、物語は原作を踏襲。
　己を呼ぶ“野生の呼び声”に応えて、己を主とし、自分の居場所を得たバックの姿には感動します。
　

　（２０２０年　２月２８日　ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）

（作品データ）

　■監督

クリス・サンダース

　■出演

ジョン・ソーントン　・・・　ハリソン・フォード

ペロー　・・・　カレン・ギラン

（その他のキャスト）
　ダン・スティーヴンス　　オマール・シー　　ブラッドリー・ウィットフォード　　ジーン・ルイザ・ケリー

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――人生は最高の冒険だ

　■Ｌｉｎｋ

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