THEY SHALL NOT GROW OLD
彼らは生きていた

　これは、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督が、英国の帝国戦争博物館に保存されていた第一次大戦当時の記録映像を修復し、最近の映像のように仕上げた異色の記録映画。

　１９１４年、第一次大戦が開戦し、８月にはイギリス国内で募兵が始まった。
　クリスマスまでには終わる、と楽観視された戦争に、若者たちは大陸へのちょっとした冒険旅行のつもりで志願したが、６週間の訓練の末に辿り着いた戦場には思いも寄らない過酷な現実が待っていた……

　第一次大戦当時の記録映像は、音声記録なしのモノクロ。また、当時の映像で、人々の動きがぎくしゃくして見えるのは、フィルムを手回しで撮影していた為、速度が一定でなく、尚且つ、毎秒のコマ数も現在より少なかった為です。
　そこで、本作のスタッフは、当時のフィルムを修正し、着色するだけでなく、最新のデジタル化技術で毎秒２４コマになるよう、必要に応じ足りないコマ映像を合成するなど、最新のデジタル加工を施しています。そして、当時の映像には音声も記録されていなかったので、読心術により撮影された兵士が何を喋っているかを解析して、音声も合成……そんな気の遠くなるような作業により、当時のフィルム映像を、第二次大戦後のフィルムカメラで撮ったようなレベルにまで引き上げています。

　映画は、当時の記録映像そのままの画質と画角で始まるのですが……戦場にカメラが移った後、これが、カラーとなり、画面一杯に広がる――これには引き込まれるような迫力があり、それまで歴史の１シーンと見ていた当時の様相が、身近に感じられる現実と感じられます。
　そして、そこに写し出されている人々が、記録された歴史の一コマではなく、そこにいた、ひとりの「人間」である、と実感する事になるのです。

　描き出されるのは、戦争と言う愚行……人々は、戦争が“記憶”されているうちは、その愚行を繰り返すまいとするが、“歴史”になった途端に、それを美化し、繰り返す事になるのです。人々の間に厭戦と平和を願う想いが広がるのは終戦の時であり、それを忘れた時、人は戦争の準備を始めてしまう……
　過去の戦争を決して“歴史”にしない為、平和を願う想いを忘れない為にも、この取り組みは有意義なものと感じられました。

ＰＳ
　本作の邦題、久々にいいタイトルをつけたものだなぁ、と感心しました。
　

　（２０２０年　２月１０日　シアター・イメージフォーラムにて）

（作品データ）

　■監督

ピーター・ジャクソン

　■出演

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://kareraha.com/

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