これは、中国のファンタジーアニメで、２０１１年よりＷｅｂ公開され、現在２８話まで公開されている人気シリーズの前日譚となります。

　深い森で暮らしていた妖精・シャオヘイ（小黒）は、人間によって森が切り開かれた事で住処を失い、何時しか人間の街で密かに暮らしていた。
　ある日、人間に追われたシャオヘイは、植物を操る妖精・フーシー（風息）に救われ、彼らが隠れ住む島に招かれる。
　安住の地を見つけた、と安堵したシャオヘイだが、そこに執行人の無限が現れ、彼らを捕縛しようとする。フーシーらは逃げ出すのが精一杯で、シャオヘイは無限に捕らわれてしまう……

　映画は冒頭からスピーディーなアクションを見せ、中盤はシャオヘイと無限による奇妙なロードームービーとなって行きます。
　アニメとして観た場合、キャラクターはこれは完全に日本のアニメ風で、何処か既視感があるもの。映画としてはジブリアニメ……と言うよりも、宮崎アニメの影響を色濃く見せます。
　妖精の棲む森は、「もののけ姫」のシシ神の森を彷彿とさせるものですし、無限と共に大海原を旅する様子は「未来少年コナン」でしょうか。そして、妖精たちの館は、「千と千尋の神隠し」の湯屋のようです。
　ただ、それが決してパクリではなく、リスペクトを感じさせるもので、尚且つ、中国文化を取り入れてオリジナルに昇華しており、宮崎駿が監督しないジブリ映画よりも、遥に宮崎アニメの後を継ぐものと言うに相応しい、素晴らしい出来。
　人間と妖精の共存を如何に成し遂げるか、と言うテーマも、昨今の環境問題に、多様性の容認、そして他者と向き合う事と言う、現代社会が避けられないものを含んでおり、社会性もしっかり見せています。

　更にクライマックスとなるアクションシーンでの、ダイナミックなフレームワークに、スピーディーながらも、緩急のテンポが絶妙で目まぐるしくない展開、その中に、コミカルな描写も盛り込む、エンターテイメントのツボを押さえた極上の演出手腕……そして、最後には感動のドラマが待ち受けるのです。
　動画の乱れもなく、美術は隙なく美しく、声優の実力も申し分ありません。そして、主要キャラは青年が主で、エロチックな要素がないので家族での鑑賞も問題ありません。
　これは文句なく素晴らしい作品ですが……上映館が極めて限られる（現在、全国で神奈川の２館のみ）事、そして、中国映画、と言うのが日本人には抵抗がある部分でしょうか？
　個人的には、この素晴らしいアニメを楽しめないのは非常に勿体ないことだと思います。
　

　（２０２０年　２月１０日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ＭＴＪＪ木頭

　■出演

山新　　郝祥海　　劉明月

　■コピー

君と未来へ

　■Ｌｉｎｋ

https://heicat-movie.com/

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