ロマンスドール

　これは、「百万円と苦虫女」、「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督が、自身初のオリジナル小説を自ら映画化したラブストーリー。
　出演は高橋一生と蒼井優。
　映画は昨年には完成していたのですが、出演者の公開がピエール瀧の逮捕騒動により公開が延び延びとなっていた模様……まぁ、お蔵入りにならなくてよかった、と言う所でしょうか……

　ラブドール職人の哲雄は、「医療用人工乳房の製作」をすると嘘をついて造形モデルに起用した、美術モデルの園子に一目惚れしてしまう。
　告白して、園子と結婚した哲雄だが、結婚後も、自身の仕事について園子に説明する事が出来ずにいた。
　やがて、ふたりの気持ちはすれ違うようになり、園子がついたひとつの嘘から、ふたりの関係は変わっていく……

　映画の中で、ここまでラブドールを描いたのは今までなかったのではないでしょうか？
　（思いつくのは「空気人形」、「ラースとその彼女」くらいですか……）
　業界最大手のオリエント工業の協力により、空気式から始まり、かつてはダッチワイフと呼ばれた日本のラブドールの歴史を説明。そして、原型製作からフレーム組み立て、鋳込みから仕上げに至る工程を描くのも興味深い。
　そして、最後、「そのこ」を作ったのはＬＥＶＥＬ−Ｄ……うん、確かにあそこなら蒼井優そのままの人形を作れるでしょうね……

　物語の方は、これは意外にも真っ直ぐなラブロマンス。
　一目惚れからままごとのような夫婦生活を始めた不器用な青年が、本物の愛と夫婦関係を築いて行く物語となっています。
　哲雄と園子、２人の結婚についての想いがぶつかるシーンは、この映画の見せ場のひとつでしょう。

　最後、哲雄は一目惚れした園子の美貌に恋をし、その魂を愛した、と言う事に気づくのがクライマックスで、これは美しくも哀しいシーンでした。
　惜しいのは、この後のエピローグがやや冗長なこと。
　完成した「そのこ」を前に、「魂のない、これはただの人形だ」と締めくくってもよかったように思います。
　

　（２０２０年　１月２６日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原作

タナダユキ

　■出演

北村哲雄　　　　　・・・　高橋一生
　
北村（小沢）園子　・・・　蒼井優

（その他のキャスト）
　浜野謙太　　三浦透子　　大倉孝二　　ピエール瀧　　渡辺えり　　きたろう

　■コピー

誰かを愛することは、
やっかいで、幸せだ。

　■Ｌｉｎｋ

https://romancedoll.jp/

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