これは、構想から３０年、幾度となくトラブルに見舞われ、「呪われた企画」とさえ言われつつも、紆余曲折を経て完成したテリー・ギリアム監督、入魂の作品。
　もっとも、この映画、実は２０１８年には出来上がって本国では劇場公開されており、それが日本で今頃公開になったのは、やはり主演が最近話題のアダム・ドライバーだからでしょうか――「スター・ウォーズ」でカイロ・レンを演じて以来、アダム・ドライバーの主演作の日本公開が続いているので……

　仕事への情熱を失ったＣＭディレクターのトビー。スペインでドン・キホーテをモチーフにしたＣＭを撮影していたが、どうにも気が乗らない。
　その夜、物売りの男から手渡されたのは１枚のＤＶＤ。それは、トビーが学生時代に撮った「ドン・キホーテを殺した男」という短編映画だった。今いる場所は、当時の撮影場所にも近い。
　翌日、ロケ地となった村を訪れたトビーは、「ドン・キホーテを殺した男」の中でドン・キホーテを演じた靴職人が、それ以来、自分をドン・キホーテだと思い込むようになってしまった事を知る。トビーは、そんな靴職人を諭すうちに従者のサンチョにされてしまい……
　
　この映画、企画から数十年の間、度重なるアクシデントで何度も中断を繰り返していました。多くの人が期待し、支援も受けながら完成を見ることが出来ない呪われた企画……そんな“完成しない映画”を描いたドキュメンタリー映画「ロスト・イン・ラ・マンチャ」まで作られるほど。それが完成してしまった――だからこそ、タイトルに「テリー・ギリアムの」と入るのです。完成する筈がない映画が、完成した、それ自体がニュースなのですから。
　そんな映画ですが、これが意外にもこじんまりとまとまっている印象。
　もっとも、冒頭部分こそやや退屈ではあるものの、ドン・キホーテとサンチョの放浪が始まる辺りから面白くなり、クライマックスの舞台となる城に入ってからは、夢と現実が交錯した混沌とした世界となって、いかにもテリー・ギリアムと言う印象。
　ラストは個人的にはちょっと不満だったのですが、映画は終わるものの、それでも「物語は終わらない」と言う締めくくりは、この“完成しない”映画には相応しいものだったのではないでしょうか。
　

　（２０２０年　１月２６日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

テリー・ギリアム

　■出演

トビー　・・・　アダム・ドライバー

ドン・キホーテ　・・・　ジョナサン・プライス

アンジェリカ　　・・・　ジョアナ・リベイロ

（その他のキャスト）
　ステラン・スカルスガルド　　オルガ・キュリレンコ　　オスカル・ハエナダ　　ジェイソン・ワトキンス　　セルジ・ロペス　　ロッシ・デ・パルマ
　ホヴィク・ケウチケリアン　　ジョルディ・モリャ

　■コピー

映画が、全てを狂わせる

　■Ｌｉｎｋ

http://www.donquixote-movie.jp/

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