太陽の家

　これは、長渕剛２０年ぶりの映画主演作。監督は「相棒」シリーズの権野元。

　昔ながらの職人気質の大工の棟梁・川崎信吾はある日、シングルマザーの池田芽衣と出会う。
　父親を知らずに育った芽衣の息子・龍生を心配した信吾は、何かと親子の面倒を見るが、これが川崎家を揺るがす騒動になってしまい……

　長渕剛は、一時の「オレ様」を押し出す所が減り、不器用な親父を演じていて悪くありません――まぁ、それでも無意味に肉体美を披露する筋トレシーンとかあったりするのですが。それにしても、歌い始めた長渕剛の口を塞いで黙らせるなど、柄本明じゃなきゃ出来ないな、と思ってしまったり……
　その妻役を演じたのが飯島直子だけど、相変わらずの美魔女っぷりにはびっくり。顔にも張りと艶があって、下手すると広末より若く見える程……あれで５０歳なんだものなぁ。

　この映画だが、冒頭、芽衣との出会いが何とも強引で不自然――ここをもう少し自然に出来なかったものでしょうか――映画に没入したい導入部で躓いてしまい、前半はどうにも信吾の人物像が受入れられませんでした。
　ただ、物語が動き出し、登場人物が把握出来てからの前半は、人情ドラマとしては悪くない印象です。もっとも、破天荒で情けに厚い主人公が、マドンナと出会って彼女のピンチを救う、と言う展開は正に「寅さん」と同じ、定番展開なので。
　（ただ、はらは「寅さん」があまり好きではありません）

　後半、龍生がやってきたのをきっかけに崩壊した川崎家の再生と、芽衣親子の再出発が描かれるのだけど、これも展開がぶっ飛び過ぎていて――とにかく、信吾と言う人物、人情に厚いのはいいのだけど、ほんと何を考えているのか判らない――そして、芽衣の病気や、その後の家族の行く末も尻切れトンボとなって放り出され、何とも物語の座りが悪く、落ち着きません。
　場面場面は勘定を揺さぶる台詞やシーンが多く、目頭が熱くなる所もあるのですが、物語が余りに粗く、伏線もエピソードもほったらかしになっており、最後、物語も観客も放り出して去って行く信吾と家族の姿に唖然とするしかありませんでした。

　（２０２０年　１月１９日　Ｋｉｎｏ　Ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

権野元

　■出演

川崎信吾　　 ・・・　長渕剛
川崎美沙希　・・・　飯島直子

河井高史　・・・　瑛太

池田芽衣　・・・　広末涼子

（その他のキャスト）
　山口まゆ　　潤浩　　松浦慎一郎　　上田晋也　　利重剛　　小林且弥
　柄本明

　■コピー

俺が、守る。

　■Ｌｉｎｋ

https://taiyonoie-movie.jp/

［戻る］