イントゥ・ザ・スカイ
気球で未来を変えたふたり

　これは、「博士と彼女のセオリー」のエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが再共演したスカイアクション。監督は、「ウーマン・イン・ブラック２」のトム・ハーバー。

　１８６２年、ロンドン。「荒唐無稽」と非難されつつも「天気を予測することが出来る」と主張する気象学者のジェームズ。気象観測の資金すら集められずにいた彼は、気球操縦士のアメリアに頼み込み、高度記録に挑む興行目的の彼女の飛行に同乗を許される。それは、アメリアにとっても、夫を亡くした悲しみから立ち直るための決意の飛行だった。
　嵐に翻弄され、蝶の大群に歓喜しつつも、ジェームズはそれまで観測された事のない上空の気象データを収集していく。気球はやがて、それまでの高度記録を更新、成層圏に達して……

　この映画、気球に乗って高度記録に挑む……と言う内容から、天空のパノラマをゆったり見せるビジュアル重視の映画、と思っていたのですが、これが、美しくもスリリング、手に汗握るスカイアクションとなっていました。
　確かに、積乱雲を突っ切り、そして人類の体験した事のない成層圏へ……と言うのは、１９世紀当時としては、それこそ宇宙飛行並の冒険行だったのです。
　映画は冒頭に遭遇する嵐に始まり、空は上昇する毎に次から次へと表情を変え、ジェームズとアメリアの人生とトラウマを見せ、ロマンスの芽生えを描くなど、意外にも内容は盛り沢山。
　クライマックスは高度記録更新後、成層圏でのバルブトラブルと言う気球ならではの静謐なスカイアクションを見せます。氷点下４０℃、全てが凍り付く中で見せるこのシーン、高所恐怖症の人ならば心底凍りつくようなものでしょう。そして、一転してガスを抜きすぎた事による急降下からの挽回、と中盤以降手に汗握るスリルの連続。
　これは予想外に面白い映画でした。

　惜しいのは、こんな内容の映画だからこそ、ＩＭＡＸで観たいもの――実際、本作はＩＭＡＸカメラで撮影されているのですが、製作のアマゾンは本作の劇場公開を限定的なものとし、９０日以上の公開を求めたＩＭＡＸと折り合わず、ＩＭＡＸ版はお蔵入りになってしまったとの事……何と言う勿体ない事を！


ＰＳ
　この物語の元になったエピソード、実は読んだ事がありました。実際には、気球を操縦していたのは名飛行士のヘンリー・コックスウェルだったのですが、彼が登場せず、アメリアと言う架空の人物とされた事には批判もあるようです……
　

　（２０２０年　１月１９日　ヒューマントラストシネマ有楽町にて）

（作品データ）

　■監督

トム・ハーバー

　■出演

ジェームズ・グレイッシャー　・・・　エディ・レッドメイン

アメリア　・・・　フェリシティ・ジョーンズ

（その他のキャスト）
　ヒメーシュ・パテル　　トム・コートネイ

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　■Ｌｉｎｋ

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