ラストレター
Last Letter

　これは、岩井俊二監督の新作。手紙の行き違いをきっかけに始まる二つの世代の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く物語。
　岩井俊二が初めて出身地・宮城を舞台に物語を作り上げました。

　裕里は、亡くなった姉・未咲の死を元・同級生に知らせるために同窓会に参加するが、そこで未咲と勘違いされてしまう。その上、初恋の相手で、未咲の文通相手だった鏡史郎と再会。
　勘違いから始まった裕里と鏡史郎の不思議な文通。未咲のふりをして、手紙を書き続ける裕里だが、そのうちの一通が、未咲の娘の鮎美に届いてしまったことで、彼女は、学生時代の鏡史郎と未咲、そして裕里の淡い初恋の思い出を辿り始める。過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いが、時を超えて動き始めて……

　この映画、いかにも岩井俊二らしい、そして、いい物語だと思います。
　美少女と郷愁、センチメンタルな感じは過剰な程にあるものの、ロマンス、と言う部分についてはどうか……どちらかと言うと、この映画は、ラブロマンスと言うよりも“なにもできなかった男”の悔恨の物語なのではないかと思ってしまいました――自分にもそんな部分があるが故に、終盤、鏡史郎に投げかけられた言葉の痛い事……これは、そんな中年男には痛すぎる映画と思います。

　それにしても、豊川悦司と中山美穂の役柄は、「Ｌｏｖｅ　Ｌｅｔｔｅｒ」のイメージをブチ壊すようなものではないかなぁ……

　岩井俊二だけに、美少女を美しく撮るのは当然……その中でも広瀬すずが複雑な内面を表現しているのは、やはりさすが、と言っていいでしょう。一方、裕里を演じた森七菜はまだぎこちないのですが、それを不器用、と言う役柄に巧くすくい上げた感じです。松たか子が、そんな裕里の成長した姿を演じて、ちゃんと同じ人物に見えるようフォローしているのは、これもまたさすがです。
　尚、岩井俊二と親交のある庵野秀明が裕里の夫役で出演していますが、「風立ちぬ」で批判された台詞棒読みも何処へやら、ちゃんと芝居しているのには成長を感じた部分です。

　美しい映像に、心揺さぶるドラマティックな物語……胸キュンと言うよりは胸が痛くなるようなものだけど、これは、見応えのあるよい映画だと思います。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原作

岩井俊二

　■出演

乙坂鏡史郎　・・・　福山雅治
乙坂鏡史郎（学生時代）　・・・　神木隆之介

岸辺野裕里　・・・　松たか子
岸辺野颯香 / 遠野裕里（学生時代）　・・・　森七菜

岸辺野宗二郎　・・・　庵野秀明

遠野鮎美 / 遠野未咲（学生時代）　・・・　広瀬すず

（その他のキャスト）
　小室等　　水越けいこ　　木内みどり　　鈴木慶一
　豊川悦司　　中山美穂

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君にまだずっと恋してるって言ったら信じますか？

　■Ｌｉｎｋ

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