ｉ
ｰ新聞記者ドキュメント-

　これは、「新聞記者」のプロデューサー、河村光庸が「Ａ」の森達也を監督に迎え、東京新聞社会部記者・望月衣塑子の姿を通して日本社会の問題点に迫るドキュメンタリー。

　管官房長官の記者会見で質問を重ねる東京新聞社会部の記者・望月衣塑子。
　「真実を伝える」、「納得できるまで取材する」と言う、言葉にすれば当たり前の主張をするだけの望月記者がなぜこれほど目立つのか。
　これは、その姿を追う中から、メディアとジャーナリズムのあるべき姿を炙り出そうとするものだ。

　官房長官の記者会見でのやり取りで名を知られるようになった東京新聞・望月記者にスポットを当てた本作ですが、何と森監督には官邸内の撮影許可が最後まで下りず、中心となるべき官邸での記者会見の様子は公開映像のみ、と言うのはいささか拍子抜けの感もありますが、それも日本政府の閉鎖的な体質を示していると見るべきでしょうか……
　また、新聞記者の日常を記録したその内容は“お仕事紹介”の面白さもあって、最後まで興味深く観られました。

　惜しいのは、画質の悪さとユーモアの欠如で、終盤のアニメーションも唐突さが否めないもの。映画としての完成度は褒められたものではありません。

　それでも、これは現在、確かに観るべき映画だと思います。
　タイトルの「ｉ」とは、“私”の意味。
　同調圧力の強い日本社会では、社会と他人に足並みを揃える事を求められ、“私”としての意見など持ち難い風潮です。
　特に、政治に関しては最近の風潮は極端で、安倍政権＝日本であり、政権に異を唱える＝反日であり、非国民であり、日本人ではない、と言う極端な意見まで出る始末。
　そんな中で、“私”はこう思う、“私”には判らない、と主張する事を伝えるのが本作です。
　映画は最後に訴えます。
　「集団が“私たち”として意思を示すのは、間違いの始まり」だと。
　「Ｗｅ」だけが是とされつつある今の日本だからこそ、「Ｉ」、つまり、ひとりの人間として、世界に、そして社会にどう向き合うべきなのかを考えさせられる映画です。
　

　（２０２０年　１月　４日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

森達也

　■出演

望月衣塑子

　■コピー

今、あなたに問う。

　■Ｌｉｎｋ

http://www.i-shimbunkisha.jp/

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