ロング・ショット
僕と彼女のありえない恋

　これは、シャーリーズ・セロンとセス・ローゲンがタッグを組んだラブコメディ。
　監督は、「５０／５０　フィフティ・フィフティ」のジョナサン・レヴィン。
　タイトルのロング・ショットとは遠距離射撃の事で、その意味する所は“無理な目標”。日本語に意訳すれば“高嶺の花”になります。

　大統領選への出馬を目指す米国務長官シャーロットは、偶然再会した、幼なじみで現在失業中の元ジャーナリスト、フレッドに選挙スピーチの原稿を依頼。やがて、実力を認められ、フレッドは国務長官のサポートスタッフに採用される事となる。
　誰もが羨む美貌と、無能な大統領を支える敏腕で全米の注目の的であるシャーロットと、失業中で年齢＝彼女いない歴のフレッドでは釣り合う訳もない、と判ってはいるのだが、行動を共にするうちに、フレッドは高嶺の花と知りながらも恋に落ちて……

　これは“男女逆転のシンデレラストーリー”。
　シンデレラに始まり、「マイ・フェア・レディ」から「プリティ・ウーマン」まで、社会的地位のある男性が、貧しい女性と恋に落ちて……と言うのは定番ストーリーなのですが、この映画はその逆をやるのです。
　シャーロットは、何せシャーリーズ・セロンが演じるだけに、美しくて尚且つ強く、しかも、映画の中では国務長官。正に「世界最強の女性」。
　一方のフレッドは、冴えない髭もじゃのオジサンですからね……「美女と野獣」と言う例えも思いつきましたが、それ以下。だって、野獣は見た目はともかく城を持っていましたから。

　そんなふたりが恋に落ちて……のラブロマンスと思いきや、映画は基本コメディ。それも、ネタの大半が下ネタ――そこはセス・ローゲンなので。
　しかも、その趣味にシャーリーズ・セロンにもつき合わせ、彼女にあんな事言わせて、あんな格好させてしまうのですから……

　もっとも、シャーロットが環境問題を国の重要施策に据えるとか、無能な大統領と大手メディアの癒着など、現政権批判もしっかり盛り込む、社会派スタンスをしっかり持つ辺りは、プロデュースも担当するシャーリーズ・セロンらしい部分でしょうか。
　そして、ロマンスの部分もよく出来ています。
　「何があってもぼくは君のそばにいたい」
　と、フレッドが乙女のような健気さを見せれば、シャーロットが格好よく啖呵を切って決める、これまた男女逆転のクライマックスには思わずほろり――まさか、セス・ローゲンのコメディで泣かされるとは思っていなかったのですが。

　これは、現在の、そしてアメリカならではのラブコメディですが、楽しい映画です。


ＰＳ
　この映画、ＴＶで宣伝を任されたのは山里亮太。
　そりゃそうだ。昨年、正に“ロング・ショット”をブチ当てたのは、自他共に認める所でしょうから。
　

　（２０２０年　１月　３日　Ｋｉｎｏ　Ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ジョナサン・レヴィン

　■出演

シャーロット・フィールド　・・・　シャーリーズ・セロン

フレッド・フランスキー　・・・　セス・ローゲン

（その他のキャスト）
　オシェア・ジャクソン・Ｊｒ．　　アンディ・サーキス　　ジューン・ダイアン・ラファエル　　ボブ・オデンカーク　　アレキサンダー・スカルスガルド

　■コピー

この恋、最重要機密事項。

　■Ｌｉｎｋ

http://www.longshot-movie.jp/

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