ぼくらの７日間戦争
Seven Days War

　これは、１９８８年に宮沢りえ主演で実写化された宗田理の同題小説の続編に当たるアニメーション。

　いつも１人で本ばかり読んでいる高校生の鈴原守は、思いを寄せる千代野綾が引っ越すと知る。
　「１７歳の誕生日は、この街で迎えたかったな」と言う綾の想いを聞いた守は思わず「逃げましょう！」と言ってしまい、一緒に家出を決行する事になる。
　駆け落ちだ、と意気込んだ守るだったが、綾の友人らも参加し、古い石炭工場で、綾のバースデー＆お別れキャンプをする、と言うささやかな抵抗となってしまう。
　だが、そこで不法滞在のタイ人の子どもと出会い、事態は思わぬ方向に進展して……

　この映画だが、全ての点でレベルが低い。
　アニメとしては、止め絵でさえキャラ作画が崩れると言う完成度で、正直劇場レベルではないし、演出も稚拙。
　物語の方も、子供騙しとまでは言いたくないが、大人視線ではリアリティも感じられず、感情移入も出来ません。作品テーマとしては、「子供と大人の戦い」なのですが、大人側も大人らしい理屈で動かないので、子供同士の喧嘩にしか見えない、と言う……
　タイ人の不法滞在者の子供が結構流暢な日本語を喋るのには全くリアリティがなく（タイ語で押し通した方がまだリアル）、クライマックスの気球にしたって、石炭ガスと言うのはほぼメタンであり、水素のような浮力が得られる訳がないだろう、と白けてしまいました。

　不法滞在の子供を、親に引き渡してめでたしめでたし、と言う、状況としては何も解決してない決着には納得出来ないし、七日間の「戦い」を経て、成長した感が見られないとか、状況は変わらないのにそれをよしとしている辺りは子供でもおかしいと思うのではないでしょうか。

　結局、企画意図としては、大ヒット作となった新海誠監督の「君の名は。」的なものが欲しかったのではないか、と思います。Ｓａｎｏ　ｉｂｕｋｉによる音楽の使い方などはかなり意識している感じですし、場面や演出にも意識していると思しき箇所がちらほら。若手俳優を揃えたキャスティングもそうでしょう。
　ただ、その新海誠監督の新作が公開された後に、パクリにもなっていない稚拙な内容の本作を劇場公開するとは――蛮勇、と通り越し、呆れるしかない、と言うのが正直な感想です。
　

　（２０１９年　１２月１８日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

村野佑太

　■出演

鈴原守　・・・　北村匠海

千代野綾　・・・　芳根京子

（その他のキャスト）
　潘めぐみ　　鈴木達央　　大塚剛央　　道井悠　　小市眞琴　　櫻井孝宏　
　宮沢りえ

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://7dayswar.jp/

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