駅までの道をおしえて

　これは、直木賞作家・伊集院静の同題の短編小説を、橋本直樹監督が脚色し、映画化したもの。
　主演は、あの新海誠監督の娘さんだと言う新津ちせ。その才能には驚かされます。子役の域を超えた自然な演技に雄弁な目力。これは天才の部類でしょう。
　共演は、「沈黙 -サイレンス-」の笈田ヨシを始め、結構な豪華キャストです。

　愛犬ルーの突然の死が受け入れられない８歳の少女サヤカは、ルーと共に見つけた“秘密の広場”で出会った一頭の犬に導かれ、古びたジャズ喫茶店に辿り着く。そこで、数十年前に息子を幼くして亡くして以来、同様に喪失感を抱えるフセ老人と出会う。
　以来、サヤカは喫茶店に通うようになり、フセ老人と打ち解けていく。そして、フセ老人が待っているという大切な何かを、一緒に探しに行こうと、サヤカとフセ老人とルースは赤い電車で海に向かうが……

　この映画、傍らに愛犬の姿のない事に戸惑うように街中を彷徨うサヤカの姿だけで、もう目頭が熱くなります。
　そうして始まるドラマは、８歳の少女が抱え込むのには余りに大きな、身近な「死」を描くもの……身近な人がいなくなってしまう、死別と言う別れを、それこそサヤカのような子供にも判るように描くドラマには心揺さぶられます。
　ただ、元が短編小説で、エピソードにもひねりがないのに対し、２時間を超える映画はさすがに冗長。新津ちせの愛らしさと、犬の自然な動きに思わず頬は緩むものの、中盤以降はさすがにもどかしく思え、感動を削がれた感がありました――これを９０分でまとめたら、むしろ印象はよくなるように思います。

　映画クライマックスで、三途の川を渡るのは鉄道――そのレールは“秘密の広場”でルーが掘り当てたもの。そして、ルーが赤い電車を好きな事を伏線にした、その展開には納得なのですが……いかに京急電鉄が全面協力とは言え、彼岸から来る列車を最新の京急車両にする事はないと思うのですが……
　

　（２０１９年　１０月２２日　品川プリンスシネマにて）

（作品データ）

　■監督・脚色

橋本直樹

　■出演

サヤカ　・・・　新津ちせ

フセ老人　・・・　笈田ヨシ

（その他のキャスト）
　坂井真紀　　滝藤賢一　　マキタスポーツ　　羽田美智子　　柄本明　　余貴美子　　市毛良枝　　塩見三省　　佐藤優太郎
　有村架純

　■コピー

大切にしているものが同じ時、
　　　　　人と人は奇跡を起こす。

　■Ｌｉｎｋ

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