マレフィセント ２

　これは、「眠れる森の美女」のヴィラン、マレフィセントを主人公にしたファンタジーの続編。

　“永遠の眠り”の呪いが解けたオーロラ姫の無垢な魂によって、真実の愛に目覚めたマレフィセント。だが、マレフィセントは邪悪な妖精としてな人々から恐れられていた。
　そんなある日、オーロラ姫の呪いを解いたアルステッド国のフィリップ王子が姫に求婚。オーロラ姫の養母でもあるマレフィセントをアルステッドに招くが、それは、妖精の国ムーアを我が物にしようとする、アルステッド王妃・イングリスの陰謀だった……

　ディズニー映画は、プリンセスが主人公となるのがお約束。しかし、そのセオリーを崩してヴィランを主役に据えた前作「マレフィセント」ですが……前作もそのテーマは如何なものかと思いましたが、続編となる本作はそれ以上の怪作と言っていいでしょう。
　前作の成功を受けて、物語の世界観は拡大。マレフィセントの同族である鳥人族が登場し、主人公らに敵対するヴィラン、と言う図式を、人類と鳥人と言う種族間の争いとして描きます。
　これは、現在の世界の構造を模式化したものと言えるでしょう――先進国と後進国、あるいは富裕層と貧困層でしょうか。富める者は強力な武器で弱者を弾圧し、生存権さえ危うくなった弱者が窮鼠猫を噛む反撃に打って出る、と言う……そして、そんな状況にマレフィセントを追い込んだのが、支配者であるイングリス王妃の流言、と言う辺りも、現実の分断の原因を示しているように思います。

　そこで始まる戦いの中では、ディズニー映画らしくもなく、鳥人は次々に灰になり、教会に閉じ込められた妖精たちを虐殺して行く地獄絵図が描かれる……この辺り、血さえ流さなければレイティングにはひっかからない、と言うディズニーのエグさがはっきりします。
　勿論、ディズニー映画故、最後はハッピーエンドにしなければならず、最後に和解があるのは当然なのですが……尺の関係があるとは言え、それまで殺し合っていた人間と鳥人が、決着がついたらあっと言う間に和解し、オーロラ姫の結婚式に仲良く出席する、と言う脳天気さはさすがに気になります――建国以来、あれだけ戦争やってるアメリカ人なのに、何のわだかまりもなく戦争を終わらせる事を描くとは……まぁ、そんな認識だから戦争を繰り返しているのかも知れませんが。

　映画としてはスケールも世界観も拡大、終盤の大スペクタクルにも見応えありますし、アンジェリーナ・ジョリーとミシェル・ファイファーと言うベテラン女優ふたりの火花散るような対峙も見物。
　ただ、それにしても、ここまで政治的なものを見せるのか、と言うのは疑問であり、そのせいか、客の入りもディズニーの新作、と言う割には寂しいものでした。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ヨアヒム・ローニング

　■出演

マレフィセント　・・・　アンジェリーナ・ジョリー

オーロラ姫　・・・　エル・ファニング

イングリス王妃　・・・　ミシェル・ファイファー

（その他のキャスト）
　ハリス・ディキンソン　　サム・ライリー

　■コピー

“真実の愛”に目覚めたはずだった。
　　新たな敵が現われるまでは――

　■Ｌｉｎｋ

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