エンテベ空港の７日間

　これは、１９７６年に起きたハイジャック事件の顛末をジョゼ・パジーリャ監督が映画化したもの。
　出演は「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクに、ダニエル・ブリュール。

　１９７６年６月２７日。テルアビブ発パリ行きのエールフランス機を、4人のテロリストがハイジャックした。ハイジャック犯の要求は逮捕されたパレスチナ過激派メンバーの解放。
　飛行機はリビアで給油後、イスラエルと国交のないウガンダのエンテベ空港に降り立ち、イスラエル政府との交渉が始まった……

　この種の映画は犯行グループと対峙する政府と、現場で戦う特殊部隊員を主人公にするのが通例ですが、この映画は、ハイジャック犯、イスラエル政府首脳、特殊部隊隊員と彼の恋人であるパットシェバ舞踊団のダンサーと、様々な視点から事件の全貌を浮かび上がらせようとします。
　パットシェバ舞踊団のダンスに、事態を暗示させると言う意欲的な取り組みも見られますが、印象的なのはやはり政治的な判断。
　テロリストとは交渉出来ない、と言う前提があるにせよ、
　「敵は隣人でもある、いつかは和平が必要になるんだ」
　と対話を試みるラビン首相が、後にパレスチナとの和平を画策するもイスラエル人に暗殺されたのに対し、武力により救出作戦を立案したペレス国防省は天寿を全うした事、この作戦で、唯一のイスラエル軍戦死者の弟が、現首相であるベンヤミン・ネタニヤフであるなど、その後の出来事を知ると考えさせられる展開となっている事が、この映画が今、作られた理由のひとつなのではないでしょうか？

　映画としてはクライマックスの救出作戦に向け、幾多のドラマを重ね、静かに盛り上げて行くのですが……ところが、最大の見せ場となる救出作戦の描写がいささか拍子抜け。
　舞踊団のダンスシーンを重ね、しかも、スローモーションを多用するそれは、緊張感を削ぐ所か、サスペンスの盛り上がりをも抑えてしまい、何時の間にか作戦は成功裏に終わっている、と言う展開は拍子抜けもいい所。
　それまでのディティールを積み重ねる描写に見応えがあっただけに、画竜点睛を欠く仕上がりにはがっかりです。
　

　（２０１９年１０月　５日　Ｋｉｎｏ　Ｃｉｎｅｍａ　横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ジョゼ・パジーリャ

　■出演

ウィルフリード・ボーゼ　・・・　ダニエル・ブリュール
　
ブリギッテ・クールマン　・・・　ロザムンド・パイク

（その他のキャスト）
　エディ・マーサン　　リオル・アシュケナージ　　ベン・シュネッツァー　　ドゥニ・メノーシェ

　■コピー

“奇跡”と呼ばれた人質救出作戦――その成功にいたる知られざる真実とは!?

　■Ｌｉｎｋ

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