これは、日本では１９６９年に約２５分カットされた短縮版が「ウエスタン」として公開された、巨匠セルジオ・レオーネによる西部劇のオリジナル版。
　出演は、ヘンリー・フォンダとチャールズ・ブロンソン。ヒロインに「山猫」のクラウディア・カルディナーレ。

　１９世紀末、西部開拓期。砂漠の中の小さな鉄道駅に、ハーモニカを手にしたひとりの男が降り立つ。彼は待ち伏せする３人の男たちをあっという間に撃ち倒すと、宿敵フランクを探して町を目指す。
　一方、ニューオーリンズから西部に嫁いできたジルは、婚家に到着する直前に何者かに嫁ぎ先の家族全員を殺され、広大な荒地のたったひとりの相続人となる。莫大な価値を秘めたその土地の利権を巡り、ジルは、鉄道会社に雇われた殺し屋のフランク、強盗団”シャイアン”のボス、ハーモニカのガンマンたちの熾烈な争いに巻き込まれていく……

　この映画、あのタランティーノ監督がこれを観て映画監督になろう、と決めたものだそうで……確かに、長回しで静かなシーンを延々と写しながら緊張を盛り上げ、突然のアクションとバイオレンスと言う演出は、なるほど、タランティーノ映画の源流はここか、と。

　’６０年代の映画ですが、金と手間をかけているだけに、画質を除けば古さはあまり感じません。ＣＧなどない時代故、大規模なオープンセットで再現した西部開拓時代は、全てが本物だけにむしろリアルだとさえ言えますし、完璧な構図と、奥行きのある情景描写のセンスは時代を超えるものでしょう。また、展開のテンポがゆったりしているのは、巨匠セルジオ・レオーネ故に許される味の類いでしょうが……さすがに、これは現在の映画では無理かなぁ……

　物語の方は、実はこれは西部に生きる男たちのドラマではなく、自由と希望を胸に新天地で未来を拓こうとした女の物語。内容的には現代の物語としてもおかしくない、当時としては進歩的なもの。そして、同時に西部劇の終焉を予感させるものとなっています。
　当時、これが理解されずに、ジルに関わる部分を大きくカット、ハーモニカのガンマンの復讐劇として公開したのも’６０年代としてはやむを得ない事だったろう、と納得しました。　
　

　（２０１９年　９月２８日　１０９シネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

セルジオ・レオーネ

　■出演

ジル・マクベイン　・・・　クラウディア・カルディナーレ

“ハーモニカ”　・・・　チャールズ・ブロンソン

フランク　・・・　ヘンリー・フォンダ

“シャイアン”　・・・　ジェイソン・ロバーズ

（その他のキャスト）
　

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

http://onceinthewest2019.com/

［戻る］