プライベート・ウォー
A PRIVATE WAR

　これは、世界中の戦地に赴き取材した、黒の眼帯がトレードマークの戦場記者メリー・コルヴィンの半生を、「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイク主演で映画化したもの。
　ドキュメンタリー映画「ラッカは静かに虐殺されている」のマシュー・ハイネマン監督が、本作で初めて劇映画を手がけている。また、シャーリーズ・セロンが製作に参加しています。

　アメリカ人ジャーナリスト、メリー・コルヴィンは、英国サンデー・タイムズ紙の戦争特派員として、レバノン内戦や湾岸戦争など世界中の戦地に赴き取材を重ねてきた。
　２００１年、スリランカ内戦下のバンニ地域に乗り込み、銃撃戦に巻き込まれて被弾、左目の視力を失ったが、その取材を評価され優秀外国人記者に輝いた。彼女は、英国プレス賞受賞式に黒い眼帯をつけて出席。それ以来、黒い眼帯は彼女のトレードマークとなる。
　平和な日常では、最前線での体験がＰＴＳＤ （心的外傷後ストレス障害）に苦しみ、それを酒と煙草とセックスで紛らわしているメリーが生き生きとする場所はやはり戦場だった。憑かれたように戦場を駆け回るメリーは、やがてシリア内戦の取材に赴くが……

　映画は、左目を失う事になるスリランカから、彼女が死亡したシリアの取材まで、１１年間を駆け足で追いかけます。
　伝説的戦場ジャーナリスト・メリー・コルヴィンのエピソードとしては、もっと面白いものもあるのですが、この映画でもかなりの駆け足展開であり、これ以上はなかなか難しいでしょうか……また、取材レポートは数多くあれど、最後まで自分の事を語る事がなかったメリーだけに、その心情や、戦場取材にかける想いのようなものを描ききれず、また、彼女の取材が如何様に活かされているのか、と言うジャーナリスティックな部分の描写への踏み込みの浅さも感じます。

　ただ、百戦錬磨の戦場ジャンキーで、酒とセックスの依存症、使命感と言うよりも、衝動に突き上げられて動いているメリーと言う複雑な人物をロザムンド・パイクは見事に演じています。眼帯に革のベスト、ヘルメットも被らず、度胸で最前線に飛び込んでしまう格好よさ。カダフィ大佐など、危険な権力者にも臆せず取材する剛胆さは、正に「男よりも男らしい」、メリーの面目躍如です。ただ、役作りが見事過ぎ、ちょっと老けてみえるのが気になる所……ヌードシーンもあるだけど、既に老女のそれだったりします。
　また、製作に名を連ねているシャーリーズ・セロンは、彼女自身がこの役を演じたかったんじゃないでしょうか？
　

　（２０１９年　９月１６日　ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督

マシュー・ハイネマン

　■出演

メリー・コルヴィン　・・・　ロザムンド・パイク

（その他のキャスト）
　ジェイミー・ドーナン　　トム・ホランダー　　スタンリー・トゥッチ　　アレクサンドラ・モーエン

　■コピー

挑む女は美しい

　■Ｌｉｎｋ

http://privatewar.jp/

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