ＳＨＡＤＯＷ
影武者

　これは、チャン・イーモウ監督による武侠映画。
　主演は「人魚姫」のダン・チャオ。ヒロインは、ダン・チャオの妻である、スン・リー。

　戦国時代の中国。小国・沛は、領土の境州を奪った強大な炎国と休戦同盟を結んでいた。
　そんな仮初めの平和を重臣である都督は苦々しく思っていたが、若き王は炎国との諍いを許さなかった。そんなある日、都督は王の許しを得ず、炎国の楊蒼将軍に境州での対決を申し込む。王は激怒して、都督を解任――だが、その都督は。病魔に冒された彼の影武者であった。
　役を解かれた都督は、影武者を立て、私人として楊蒼将軍との戦いの準備を進めるのだが……

　この物語、三国志の「荊州争奪戦」を基にしていますが、映画は三国志の世界を離れ、チャン・イーモウ監督の美意識に貫かれた映像美で綴られたものとなっています――それは、陰と陽の太極図をモチーフとした水墨画の世界。
　雨の降り止まない背景は、正に水墨画の世界で、映像もモノトーンに近い彩度を抑えたもの。
　武侠映画ではあるものの華美ではなく、物語のスケールも小さくまとまっており、まるで日本の時代劇のようであり、特に黒澤映画の影響を感じられるものとなっています。
　そうして描かれる、人と影……影武者の物語は確かに一見の価値ありと思います。

　ダン・チャオはバラエティでも活躍する演技の幅の広さを以て、都督と彼の影武者と言う二役をまるで別人のように見事に演じ分けていますし、妻であるスン・リーとの息もぴったり。　
　また、王の妹を演じたクアン・シャオトンは、これまた魅力的な美少女っぷり。かつてのチャン・ツィイーもそうでしたが、こうした趣味もチャン・イーモウらしいなぁ、と。

　アクションを期待すると拍子抜けするかも知れませんが、まるでシェイクスピア劇のような王宮にうごめく陰謀と恩讐……それを独自の世界観と、映像美で描く、チャン・イーモウ監督ならではの絵物語と言うもので、見応えは充分です。
　

　（２０１９年　９月１１日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

チャン・イーモウ

　■出演

都督(子虞) / 影武者(境州)　・・・　ダン・チャオ

小艾　・・・　スン・リー

（その他のキャスト）
　チェン・カイ　　ワン・チエンユエン　　ワン・ジンチュン　　クアン・シャオトン　　フー・ジュン　　レオ・ウー

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影で終わるのか？

　■Ｌｉｎｋ

http://shadow-movie.jp/

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