ラスト・ムービースター

　これは、２０１８年９月６日に逝去した、往年のアクションスター、バート・レイノルズ最後の主演作。
　２０１７年に本国公開された映画で、それが今頃になって劇場公開されたのは、現在公開中の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で、ディカプリオが演じるのがバート・レイノルズをモデルとしたと言う事に関連があるのかも知れません。

　往年の映画スター、ヴィック・エドワーズのもとにある映画祭の主催者から功労賞受賞の招待状が届く。
　「ロバート・デ・ニーロも受賞した」と言われ、しぶしぶ参加するも、飛行機はエコノミー、空港に迎えに来たアテンドの女性、リルはヴィックの顔も知らない始末……実は、映画ファンの若者が主催する名もない映画祭だと知り憤慨するが、そこは彼が生まれ育った街の近くだった……
　
　これはいい映画だったなぁ……
　往年の大スターが、地方の映画祭に招かれるも、そのショボさに憤慨、と言う辺りまでは凡庸な印象でしたが、ヴィックの運転手兼アシスタントとしてつけられた女性、リルと共に、故郷に向かうロードムービーになってからの展開はなかなかいい。
　過去の栄光に縋る偏屈で傲慢な老人だったヴィックが、思い出に触れて人生を悔い改めるのもいいし、やかましく自分勝手なビッチと見えたリルが、どんどん可愛らしい女性に見えて来る、自然な展開もなかなか。
　過去の主演作の中の自分と対話をし、
　「何故、自分はイーストウッドやデ・ニーロのようになれなかったのか？」
　と言う、バート・レイノルズの俳優人生を重ねたようなヴィックの反省と、そんな気づきから人生の最晩年を変える事、同時に、自分にスターの輝きを見たひとりの女性の人生を変える事が出来た、素敵な物語。
　最後の表彰式でのヴィックのスピーチ、そして、何よりも彼のファンの若者たちの映画愛が報われたのには思わず涙してしまいました。
　
　上映後には、観客席から小さな拍手が湧きました。
　低予算映画ですし、話はベタで、予定調和なオチであるとは言え、こんな風に幸せになれる映画はやはりよいものです。
　

　（２０１９年　９月　８日　シネマカリテにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

アダム・リフキン

　■出演

ヴィック・エドワーズ　・・・　バート・レイノルズ

リル・マクドーガル 　 ・・・　アリエル・ウィンター

（その他のキャスト）
　クラーク・デューク　　エラー・コルトレーン　　ニッキー・ブロンスキー　　チェヴィー・チェイス

　■コピー

人生のあらすじは、途中で変えられる。

　■Ｌｉｎｋ

https://lastmoviestar2019.net-broadway.com/

［戻る］