ＦＲＥＥ
ＳＯＬＯ
フリーソロ

　これは、２０１９年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞のロック・クライミングのドキュメンタリー。

　ロープや安全装置を使わず、たったひとり、己の手足だけで垂直の岩盤をよじ登るフリーソロ・クライミングのスター、アレックス・オノルドには、かつて誰もフリーソロで登ったことのない巨岩エル・キャピタンに挑む、と言う夢があった。
　映画は、この前任未踏の偉業に望むアレックスの姿を追う……

　これは高所恐怖症の人は絶対観られない映画。
　また、そうでなくとも、フリーソロのクライマーと言うのは人間業ではありません。これを観るとボルダリングなど所詮ゲームに過ぎない事がよく判ります。なにしろ、アレックスは、岩の割れ目に掌や腕を差し込み、いや、それどころか親指ほどの岩の出っ張り、いや、岩盤のざらつきに手足を押しつけて体重を支え、垂直の岩盤をよじ登って行く――正にリアル・スパイダーマンです。

　この映画は、そんな超人としか思えない、アレックス・オノルドのプライベートに密着。高さ１０００ｍの垂直の岩壁、エル・キャピタンに挑む数年の取り組みを描いて行きます。
　人生を岩盤にとらわれたアレックスに、しっかり恋人がいるのが意外だったりし、彼女と新居に住み始めるなど、リア充エピソードもありますが、圧巻は最後のエル・キャピタン登坂。
　高さ１０００ｍ、命綱なし。アンカーを打たず、ザイルもかけず、アシスタントも勿論なし、たった独りでよじ登っていく……このドキュメンタリー撮影の為、レンズを向けていたカメラマンが、
　「もう耐えられない。俺は二度とこんな仕事はしない」
　と、泣いてカメラを放り出してしまう程の緊張……観ているだけのこちらも手にじっとり汗をかかされてしまった映画でした。
　

　（２０１９年　９月　８日　新宿ピカデリーにて）

（作品データ）

　■監督

エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ　　ジミー・チン

　■出演

アレックス・オノルド　　トミー・コールドウェル　　ジミー・チン　　サンニ・マッカンドレス　　ディエダー・ウローニック

　■コピー

　■Ｌｉｎｋ

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