これは、２０１０年に出版された、ウィリアム・カムクワンバの自らの経験に基づくノンフィクションを、俳優のキウェテル・イジョフォーが初監督作品として映画化したもの。

　貧しいアフリカの国・マラウイ。干ばつで学費が払えなくなり、中学校を退学させられた１４歳のウィリアム。
　飢饉で村を捨てる人が続発する中、乾期でも農作を行う為、ウィリアムは独学で風車を使った自家発電装置により、揚水ポンプを駆動して灌漑を行う事を思いつくが……

　これは、勉学と、科学知識によって人々を救う、少年の立身出世の物語。
　アフリカの最貧国の貧しい農村の子だったウィリアム・カムクワンバは、その知恵と創意工夫で村を救い、アメリカの大学に留学。そして、タイム誌の「世界を変える３０人」に選ばれるまでになるのですから。

　描かれるのは、学ぶ事の大事さと、そして子供たちが持つ無限の可能性。
　ウィリアムは、学校の図書室で読んだ科学雑誌から風力で電気が起こせる事を知り、発電の理論を自ら学ぶと、村のスクラップ置き場からかき集めた資材と父の自転車を使って風力発電機を作ってしまうのです。
　勉強とはやらされるものでも、勿論、いい学校に行くためのものでもない。子供たちが未来を切り開く為にある――それを子供の目線から描いて見せるのです。中学校を退学させられるウィリアムの、ぼくから学ぶ機会を、そして未来を奪わないで……と言う悲痛な訴えは心を打ちます。　

　そんな、エピソードとしては非の打ち所がない物語を語るこの映画は、子供たちに大事な事を伝える秀作ではあると思うのですが、惜しいのは、このクライマックスを父と子のドラマにしてしまったこと。
　確かに感動的な展開ではあるのだけど、この類い希なエピソードを、ありきたりな親子の和解のドラマに吸収させてしまったのには勿体ない、と思ってしまいました。

　（２０１９年　８月　９日　ヒューマントラストシネマ有楽町にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

キウェテル・イジョフォー

　■出演

ウィリアム・カムクワンバ　　・・・　マクスウェル・シンバ

トライウェル・カムクワンバ　・・・　キウェテル・イジョフォー

（その他のキャスト）
　アイサ・マイガ　　リリー・バンダ　　レモハン・ツィパ　　フィルベール・ファラケザ　　ジョセフ・マーセル　　ノーマ・ドゥメズウェニ

　■コピー

僕がどうやって風力発電で未来を手に入れたのか。

　■Ｌｉｎｋ

https://longride.jp/kaze/

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