これは、スウェーデンに実在する男子シンクロナイズド・スイミングチームをモデルとしたフランス映画。

　鬱病を患い、会社を退職して引きこもり生活を送っていたベルトランは、ある日、地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング」のメンバー募集を目にする。
　これに何故か惹きつけられたベルトランはチーム入りを決意する。
　元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌに指導されるそのチームは、皆、家庭や仕事、将来に何らかの問題を抱えた悩める中年親父集団であった。
　そんな彼らだが、無謀にも、世界選手権で出場を目指すことになって……

　この映画に登場する男たちの抱える、鬱病でドロップアウトしたり、女房に逃げられたり、介護に悩んだり、ＩＴ化について行けなくなったり、会社が倒産しそうになったり……と言う問題は中年男性であれば身近な悩みとして共感出来る筈。この映画は、そんな問題で人生から“落ちこぼれた”男たちの逆転劇であり、謂わば、“中年男の「ウォーター・ボーイズ」”とでも言うべき映画となっています。
　そんな彼らが世界選手権に挑む経緯は、不覚ながらうとうとしてしまって見逃してしまった（仕事疲れの上、一杯ひっかけてからのレイトショー鑑賞は拙かった）のですが、チームにデルフィーヌの現役時代のパートナーだったアマンダがコーチとして就任してからは、正にスポ根映画のノリの猛特訓となります――パワハラ紛いのアマンダの指導に男たちが思わず反発、それに強烈なしっぺ返しがあるのにも笑いました。

　映画の背景にあるのは、やはり、フランスの厳しい社会情勢があるのでしょう。女性や移民と言う社会的弱者が注目されますが、社会の中核である働き盛りの男性だって、ひとつ道を踏み外せばドロップアウトし、弱者となってしまうと言う世の中で、それでも現実に誇りを持って立ち向い、結果を出す事で、自分も周囲も変わって行く……これは、そんな弱い立場の人々に向けた応援歌のような映画。世界大会の後、朝陽に向かっての雄叫びには思わず胸が熱くなります。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

ジル・ルルーシュ

　■出演

ベルトラン　・・・　マチュー・アマルリック

デルフィーンヌ　・・・　ヴィルジニー・エフィラ
アマンダ　　　　 ・・・　レイラ・ベクティ

（その他のキャスト）
　ギョーム・カネ　　ブノワ・ポールヴールド　　ジャン・ユーグ・アングラード　　マリナ・フォイス　　フィリップ・カトリーヌ
　フェリックス・モアティ　　アルバン・イワノフ　　バラシンガム・タミルチェルヴァン

　■コピー

人生を舞え。
ぶざまに　かっこよく

　■Ｌｉｎｋ

http://sinkorswim.jp/

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