これは、脚本家、岡田惠和とロックバンド「銀杏ＢＯＹＺ」の峯田和伸の共著による小説を映画化したもの。
　監督は、これが映画デビューとなる菅原伸太郎。　出演は、古舘伊知郎の息子の古舘佑太郎、石橋凌と原田美枝子の娘の石橋静河と言う、二世俳優のＷ主演です。

　コウタは中学1年のとき、伸二という親友がいた。冴えないコウタは、何をやってもカッコいい伸二と共に、大好きなあーちゃんこと天野千日のことを“天の川の女神”と呼んで、２人だけのアイドルとしていた――それから１０年。高円寺の冷凍食品工場で働くようになったコウタは、七夕の日、会社帰りに千日と偶然出会う。その日は、交通事故で亡くなった伸二の命日でもあった。
　思いがけず楽しい時間を過ごした２人は１年後の同じ日に会う約束をして別れるのだった……

　この映画、映画冒頭、コウタの描写に違和感。成人男性としてはあり得ない程の幼さと落ち着きのなさ――これは、ひょっとしたら何らかの障碍があるのでは？と言う疑問を抱かせるもので、コウタ役の古舘佑太郎の演技の稚拙さもあって、正直、「これはない」と思い、鑑賞を止めて席を立つか、と思わせる程でした。
　それから、交通事故のトラウマで、「自動車が怖い」と言う千日が、道路の真ん中で長々と立ち話とか、そうした細かな描写の齟齬に違和感もあり……この辺りは監督の不慣れさによる粗でしょうか？
　もっとも、その後、コウタと伸二の中学生時代が描かれ、やがて、千日の抱えた想いと苦しみが浮かび上がる後半で持ち直します。
　また、この映画、傷心のヒロインを救うのが、主人公の優しさでなければ、愛でもなく、ただ「笑い」だった、と言うのは、いたずらに「愛と感動」を売り物にする昨今の作劇としては好感の持てるもの。その上で、終盤では思わず涙を誘われるシーンもあったりして、鑑賞後の印象は悪くなかったのですが……
　
　あと、この映画で気になったのは、「銀杏ＢＯＹＺ」の音楽をモチーフとし、原作小説、そして映画にも峯田和伸が関わっているのに、音楽の使い方が下手。折角の楽曲も活かせておらず、映画における“音楽の魔法”も使いこなせていないのでは、勿体ないというか何と言うか……　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

菅原伸太郎

　■出演

笹沢コウタ　・・・　古舘佑太郎

天野千日　・・・　石橋静河

（その他のキャスト）
　和久井映見　　光石研　　清原果耶　　小林喜日　　大西利空　　泉澤祐希　　恒松祐里　　しゅはまはるみ　　渡辺道子　　
　ポール・マグサリン　　山崎光　　蒔田彩珠　　吉村界人　　岸井ゆきの　　峯田和伸　　宮本信子

　■コピー

全力で、恋した時間は、永遠なんだ。

　■Ｌｉｎｋ

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