ゴールデン・リバー

　これは、パトリック・デヴィッドの小説「シスターズ・ブラザーズ」を、「ディーパンの戦い」のジャック・オディアール監督が映画化したもの。
　ヴェネチアを始め、各国の映画祭で高い評価を受けた西部劇映画です――もっとも、西部劇で俳優もアメリカ人ではあるけれど、これは歴としたフランス映画。ロケもスペインなど欧州で行われています。さしずめ、マカロニ・ウェスタンならぬフレンチ・ウェスタンと言うところでしょうか。

　１８５１年、ゴールドラッシュに沸くアメリカ西部で、ボスの“提督”から新たな仕事を受けたシスターズ兄弟。彼らは西部では“最強の殺し屋兄弟”として知られていた。
　仕事の内容は、連絡係のモリスが追う男、ウォームから黄金を容易に選り抜く薬剤の化学式を聞き出し、そして、彼を始末することだった。
　だが、モリスの寝返りにより兄弟は逆に捕らえられてしまい、採掘した黄金を山分けにしよう、と言うウォームの提案で、4人は手を組んで金を採ろうとするが……

　この映画、予告編では黄金の輝きに運命を狂わされた男たちのサスペンスと言う宣伝をしていますが、映画は大分様子が違います。
　西部劇ではお馴染みの荒野の追跡や銃撃などもありますが、これらは妙に引いたカメラにより、アクションとして盛り上がらず、黄金が男たちの運命を変える、と言う展開もサスペンスを盛り上げる描写とはなっていません。こうした、ちょっと外したような描写は、ジャック・オディアール監督の持ち味でもあるように思います。
　むしろ、この映画で中心となるのは、普通の暮らしに憧れ、惚れた女と所帯を持つべく殺し屋稼業から足を洗おうとする兄と、酒乱だった父の血を引くが故に家族を持つことを恐れ、殺し屋稼業でのし上がろうとする弟の関係性であり、まとめれば「シスターズ兄弟、最後の仕事」と言うような内容で、原題の「ＴＨＥ　ＳＩＳＴＥＲＳ　ＢＲＯＴＨＥＲＳ」の方がよかったように思います。
　
　こうした、西部劇の仕掛けを全て外していくのは、終盤のボスとの対決まで続き、これが肩すかしに終わって、ラストの妙にほのぼのとした展開には唖然とする程――なるほど、フランス映画で西部劇をやるとこうなるのか、とも思いましたが……
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ジャック・オディアール

　■出演

イーライ・シスターズ　・・・　ジョン・C・ライリー
チャーリー・シスターズ　・・・　ホアキン・フェニックス

ジョン・モリス　・・・　ジェイク・ギレンホール

ヘルマン・カーミット・ウォーム　・・・　リズ・アーメッド

（その他のキャスト）
　レベッカ・ルート　　アリソン・トルマン　　ルトガー・ハウアー　　キャロル・ケイン

　■コピー

夢に、目がくらむ。

　■Ｌｉｎｋ

https://gaga.ne.jp/goldenriver/

［戻る］