これは、「ハンナ・アーレント」のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督が、初めてコメディ・ドラマに挑んだ意欲作。
　この映画、ニューヨークを舞台としていますが、主要俳優にアメリカ人はおらず、しかもこれはドイツ映画。映画の雰囲気は、アメリカ映画とは異なり、むしろそこかしこにアメリカ社会に対する批判を含んでいるように思います。

　ニューヨ−クのデザイナーズ・アパートに住み、デザイナーとして自身のファッションブランドの立ち上げを画策する元モデルのジェイドは、最初のショーを目前にして突然、夫ニックから離婚を告げられてしまう。ニックは、４０歳になるジェイドから、若いモデルに乗り換えたのだ。
　傷心の中、夫の前妻マリアがアパートに現われ、「慰謝料代わりにこの家の所有権を貰っている」と告げて、強引に居座ってしまう。
　そして、女２人の奇妙な同棲生活が始まって……

　ジェイドを演じたイングリッド・ボルゾ・ベルダルは、元・一流モデルと言う役を演じるにはちょっと太めのように思いますが、その分、女性美に溢れ魅力的……まぁ、それがこの映画を観ようと思った理由のひとつでもあるのですが。

　内容としては、大人のラブコメと言う所。同じ男に捨てられた、と言う事以外はまるで共通点のない女２人の噛み合わない生活っぷりを描き、展開としては、そんな２人が組んで不実な夫に逆襲するものと思っていたら、これが予想外の決着に落ち着くのも「あれっ？」って感じです。
　勿論、そんな物語には、個人主義で拝金社会のアメリカ社会に対する批判や、家族のあり方、を問うテーマも内包されており、エピソードとしては面白い部分もあります。
　ただ、物語を転がして行く、マリアの行動理由がどうにも理解不能で、彼女にまつわるエピソードがどうにも咀嚼出来ない感じ。そのユーモアのセンスも含め、そうした設定と物語に、いささか独善的で独りよがりな部分を感じてしまうのは、それがドイツ人ならではのセンスなのか、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の女性ならではの感覚なのか……最後のジェイドの決断を含め、どうにも腑に落ちなかったのが残念に思えました。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

マルガレーテ・フォン・トロッタ

　■出演

ジェイド　・・・　イングリッド・ボルゾ・ベルダル

ニック　・・・　ハルク・ビルギナー

マリア　・・・　カッチャ・リーマン

（その他のキャスト）
　フレドリック・ワーグナー

　■コピー

女の人生は
ワケありほど価値が上がる

　■Ｌｉｎｋ

https://gaga.ne.jp/NYwakeari/

［戻る］