ザ・ファブル

　これは、南勝久の同題漫画を岡田准一主演で実写映画化したもの。
　監督には、「ガチ星」で注目された江口カンが抜擢されました。

　いかなる相手も６秒以内に殺す事が出来ると言う凄腕で、裏社会からはファブル<寓話>と呼ばれ、恐れられる伝説の殺し屋がいる。ある大仕事の後、組織のボスに呼び出された彼は、ほとぼりを冷ます為、大阪に潜伏、誰も殺さず一般人として一年間暮らせと命じられる。
　佐藤アキラという偽名を与えられ、組織が口利きした地元ヤクザ、真黒組の若頭・海老原が用意した家で、お目付け役兼世話役――彼は日常生活が殆ど出来なかった――のヨウコと共に“普通”の生活を始めるが……

　これが拡大公開されるメジャー映画デビューとなる江口カン監督映画ではあるものの、岡田准一主演だけにキャストは豪華。組織のボスに佐藤浩市、ファブルを騒動に巻き込む厄介者が柳楽優弥、対立組織の悪に向井理、福士蒼汰が顔を揃えると来てはイケメンの無駄遣い、と言う声も出そうです。
　そして、岡田准一主演となれば、彼のアクションがやはり見物。本作ではハリウッドでも活躍するアラン・フィグラルズをアクション監督に招き、流麗なアクションシーンを組み立てているのも見どころでしょう。ハリウッド流の細かなカット割でテンポよく一対多数のアクションを見せ、それに応じる岡田准一もまた見事。ジャッキー・チェンばりにビルの間を手足を突っ張りつつ登って行くのを見せるなど、今やジャニーズの、と言うよりも日本屈指のアクションスターとなった事をその体術で証明するかのようです。

　惜しいのはクライマックスのゴミ処理場でのアクションシーン。殆ど丸腰で武装した相手を、間違っても殺さずに倒して人質を奪還する……と言う設定にはいささか無理を感じました。ゴミ処理場と言う設定を活かし、可燃性ガスが充満していて火花を散らす銃火器は使えない、と言うような設定があってもよかっただろうし、最後に洋子が救援に駆けつけ、人質を連れて無事脱出……と言う所の描写が欠落しているのも痛快さを削ぎます。ここは、「そう来るか！」と言うのを見せて欲しかった所です。
　もっとも、このように気になる部分は終盤に集中しており、それまではなかなかよい印象でした。ニコリともせずに、その特異なキャラクターで笑いを取る<ファブル>は岡田准一の違った一面を見せていましたし、周囲の人間模様も面白い。シリーズ化してもよさそうな感じですが、岡田准一始め、この豪華キャスト故に難しいかな……
　

　（２０１９年　６月２７日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督

江口カン

　■出演

<ファブル>／佐藤アキラ　・・・　岡田准一

ヨウコ　・・・　木村文乃

ボス　・・・　佐藤浩市

海老原　・・・　安田顕

（その他のキャスト）
　山本美月　　福士蒼汰　　柳楽優弥　　向井理　　木村了　　井之脇海　　藤森慎吾　　宮川大輔　　佐藤二朗　　光石研
　加藤虎ノ介　　南出凌嘉　　六角精児　　粟島瑞丸　　モロ師岡　　好井まさお　　倉本美津留　　藤原光博

　■コピー

誰も殺さず、救えるか。

　■Ｌｉｎｋ

https://the-fable-movie.jp/

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