これは、東野圭吾の同題小説を映画化した近未来ＳＦ恋愛サスペンス。監督は、「聖の青春」の森義隆。

　脳科学研究者の崇史は、幼なじみの親友で、同僚の智彦から恋人の麻由子を紹介される。
　彼女は崇史が学生時代、密かに想いを寄せていた人だった。崇史は嫉妬に苦しむが、智彦との友情と板挟みになって苦しむ。
　ところがある朝、崇史が目覚めると、麻由子は自分の恋人になっていて、智彦は消えていた……

　「ふたつの世界を行き来するＳＦ恋愛サスペンス」と言う触れ込みの本作ですが、映画自体の責任ではないし、最近の映画としてはよくある事なのですが、予告編で見せ過ぎています。
　予告編にあった「こっちが現実だ……」と言う台詞、そして、主人公が脳科学研究に携わっている事から、この物語が描くふたつの世界が、パワレルワールドなどではなく、記憶操作による「作られた世界」だと言うのが予測ついてしまうのです。そうすると、現実離れした方が現実ではない、と言うのが早々に判ってしまいます。

　こうして“パラレルワールド”のネタは早々に割れてしまい、展開の予測はついてしまうので、ミステリーとしての面白さもなく、その中で主人公の崇史が勝手におろおろするだけのぐだぐだなドラマ……崇史の感情にはどうにも共感出来ず、クライマックスで彼が泣き崩れる理由が理解出来ず、そこで白けてしまいます……物語としては、この決断に大きな感情の流れが来るよう、ドラマを盛り上げておいて欲しかった所です。
　それでは吉岡里帆でも鑑賞しようと思えば、後半、フィルム・ノワールを意識したような粗い画質でコントラストを強調した映像は、ヒロインの麻由子を演じる吉岡里帆を綺麗に撮れておらずず、まるで１０歳も老けてしまったような有様――元々、吉岡里帆は童顔なので撮り方によって一気に老けて見えるのですが。
　せめて最後の判断に麻由子が、崇史にとってのファム・ファタールなのか、或いは彼を裏切る悪女なのか、と言うサスペンスを潜ませて欲しかった所ですが、それすらもない始末で……なんとも退屈な映画でした。
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

森義隆

　■出演

敦賀崇史　　・・・　玉森裕太

津野麻由子　・・・　吉岡里帆

三輪智彦　　・・・　染谷将太

（その他のキャスト）
　筒井道隆　　美村里江　　清水尋也　　水間ロン　　石田ニコル　　田口トモロヲ

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真実の世界は、どっちだ？

　■Ｌｉｎｋ

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