これは、沖縄出身の人気バンドＭＯＮＧＯＬ８００の同題の歌曲をモチーフに「羊と鋼の森」の橋本光二郎監督が作り上げた青春音楽映画。

　沖縄の高校で人気を集めていた亮多をリードボーカルとする４人組バンド。
　ある日、行きつけのライブハウスで、東京のレーベルに声をかけられ、プロデビューを打診された亮多らは有頂天に。だが、その直後、轢き逃げ事件により、メンバーの慎司を失い、バンドはバラバラになってしまう。
　そんな日々の中、慎司の妹の舞が、慎司の最後の曲を完成させて欲しい、と亮多に頼んだ事で、亮多は再びマイクを手にする事になるが……

　この物語、元々、ＭＯＮＧＯＬ８００のＰＶ製作に当たり、地元・沖縄に強く根差す彼ら自身に負けない“物語”が必要、と企画され、それから８年の歳月を経て映画としたもの。
　物語は、高校生バンドの失意と再生を軸に、沖縄の“今”を描くべく、慎司と在日米軍兵士の娘である少女リサとのフェンス越しの淡い恋、轢き逃げ事件に端を発する基地反対運動など、基地問題を絡めた内容が盛り込まれてはいるものの、いささか踏み込みが浅く感じられ、また、そんな沖縄の現状をよしとしているかのような、反対運動に対する冷淡さ、と言うか諦念のようなものを感じてしまい、ちょっと中途半端な印象を受けてしまいました。

　ただ、音楽シーンはなかなかよく、演じる若い俳優も、いずれも吹き替えなしでバンド演奏に取り組んでいるのは見事なもの。演奏シーンは粗削りですが、音程が外れるのもなんのその、若いエネルギーと想いをぶつけた歌声には心を打つものがあります。
　これぞ正に音楽の魔法。
　それで、幾度とな、心揺さぶられ、涙を誘われました。
　そんな魔法を生み出したＭＯＮＧＯＬ８００の音楽は、それだけで心震える見事なものであっただけに、前述したような沖縄の複雑な情勢に腰が引けたような部分が残念でした。　
　

　（年　月　日　にて）

（作品データ）

　■監督

橋本光二郎

　■出演

真栄城亮多　・・・　佐野勇斗
池原航太郎　・・・　森永悠希
譜久村舞　・・・　山田杏奈

リサ・クルーソン　・・・　トミコ・クレア

（その他のキャスト）
　眞栄田郷敦　　鈴木仁　　トミコクレア　　金山一彦　　佐藤貢三　　中島ひろ子
　清水美沙　　世良公則

　■コピー

届け、あなたに――。

　■Ｌｉｎｋ

http://www.chiikoi.com/

［戻る］